2022 Fiscal Year Annual Research Report
光の極限性能を生かすAIフォトニクス高次機能の創成
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20H00233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成瀬 誠 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20323529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 哲 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波標準研究センター, 研究員 (20820806)
志賀 信泰 国立研究開発法人情報通信研究機構, グローバル推進部門, プランニングマネージャー (50536050)
内山 和治 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70538165)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 意思決定 / 光コンピューティング / 光情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
情報技術の根底を支えてきたムーアの法則の終焉が認識され、持続可能なコンピューティングパワーと新機能の実現に向け、光を含めた物理過程の積極利用の重要性が高まっている。本研究は、研究代表者らが世界に先駆けて実現してきたナノ光学や光カオスを用いた意思決定等の光情報処理に関する実績を基盤として、今後の人工知能(AI)の時代に必須の高次情報処理を、光の極限性能を生かして実現する革新的AIフォトニクスを目指す。 本年度は、前年度までの成果を踏まえながら、高次機能の創成に向け本研究の基礎となる要素の充実に注力した。(1)前年度において、光の軌道角運動量を活用することにより選択肢数の増大を可能とさせ、さらに量子干渉効果を用いることで競合を回避する新たな原理を提案し数値計算により実証したが(Sci. Rep. 2021)、当該原理をさらに発展させ、個々のエージェントの選好性を充足させつつ競合を回避する確率的意思決定原理を提唱した(Phys. Rev. Applied 2022)。(2)フォトクロミック材料は光によって可逆的に色が変わるというメモリ機能だけでなく、ミクロにおける分子構造の変化がマクロにおける形態変化を引き起こし多様な不連続的形態変化を示す点も特徴であり今後のシステム応用が期待されている。そこで本研究ではツバメの尾のカタストロフィーを用いた統一的モデル理論を提唱するとともに、従来知られていなかったフォトクロミック現象の示唆を与えた(J. Appl. Phys. 2023)。(3)精密時刻同期と光の合成に関しては、実験的基盤の整備を進め、無線系において情報伝達の遅延保証を実現する方式の実証に成功した(IEEE Access 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数の原著論文が掲載されるなど結果に結びついており、併行して新たな知見が得られているため。特に【研究柱B】「ナノ領域での光学的相関を生かした順序構造の理解」では、フォトクロミック結晶における局所的光学的相関を近接場光によって観測し、これに基づいて生成したシューベルト多項式を活用した順序構造の認識を実現し、原著論文の刊行に至った(Sci. Rep. 2022)。これは当該項目の内容を前倒しで実現したことに相当する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、研究代表者らによる光機能システム研究の充実した実績に基づきながら、光機能の高次化を明確な方向性として発展させる。その際、システムレベルの独創性や先駆性を引き続き重視し新しい可能性へのチャレンジを継続する。 【研究柱A】光カオスを生かした人工データ生成:光リザーバコンピューティングにおいては従来より対象のダイナミクスをコピーする能力が知られていたが、近年の研究の進展により、教示に用いていないダイナミクスの再生能力が示されている。ここに一種の人工データ生成能力を見出すことができる。本研究ではこれらの新規な機能構築に向けた研究を進捗させる。 【研究柱B】ナノ領域での光学的相関を生かした順序構造の理解:フォトクロミック結晶における局所的光学的相関を近接場光によって観測し、これに基づいて生成したシューベルト多項式を活用した順序構造の認識を実現した(Sci. Rep. 2022)。本達成を受けて、本研究においては新たなフォトクロミック結晶の活用を含め、ナノ領域での光学的相関を用いた機能構築のリソースの充実に焦点を当てる。 【研究柱C】精密時刻同期による遅延保証光ネットワーク:高精度時刻同期という新技術を光ネットワークと合成することによる調停の軽快さ及び遅延保証能力に関する検討を踏まえ、実際のデバイスを用いた実証研究について引き続き準備を進捗させる。また、光の特長を引き出すためのさらなる方策の検討に着手する。
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Research Products
(34 results)