2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H00249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨士田 誠之 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40432364)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカルフォトニクス / フォトニック結晶 / テラヘルツ / 導波路 / 伝送路 / 通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,研究代表者らが世界に先駆けて開拓してきた世界最小損失のテラヘルツフォトニック結晶回路技術に物質科学に変革をもたらしているトポロジカルな性質を与えることで飛躍的な発展をはかり,テラヘルツ波を利用した通信やセンシングなどの応用を切り拓くことを目指している.
トポロジカルフォトニック結晶の基本構造として,大小の三角空孔を六員環状に配置した構造を高い抵抗率を有するシリコンウエハへ形成した構造を用いた.120度と60度の急峻な曲げ構造を有する導波路および,曲げ構造がない直線導波路を作製し,エレクトロニクスに基づく高精度テラヘルツ分光システムで評価を行った.その結果,トポロジカルフォトニック結晶導波路の1回あたりの曲げ損失は0.1 dB以下であり,従来の円孔三角格子を形成したフォトニック結晶の0.2 dBよりも小さいトポロジカルな電磁波の伝搬に期待される結果が得られた.また,単位長さあたりの伝搬損失は0.015 dB/cmと見積もられ,これも従来のフォトニック結晶の0.04 dB/cmを下回った.
このような極低損失導波路の通信応用の可能性を光電変換素子を用いたテラヘルツ通信システムで検証した.オンオフ変調方式を用いた場合,ビット誤り率10のマイナス11乗以下となるリアルタイムに映像伝送可能な実用上エラーフリーな通信データレートとして11 Gbit/sが得られ,曲げ導波路を含む従来のフォトニック結晶の1.5 Gbit/sを大きく更新した.また,非圧縮4K映像の無線伝送を行うことにも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポロジカルな性質を有する導波路では,電磁波の伝搬に関して,構造の乱れ,すなわち,曲げや欠陥等に対する散乱損失の抑制,極低損失な伝搬特性といった堅牢性が最も期待される効果である.本研究では,世界に先駆けてテラヘルツ帯における曲げ伝送路の極低損失性を実証することに成功した. 加えて,このような導波路に関して,チップ内高速データ通信および,非圧縮の高精細映像の無線伝送という具体的なアプリケーションに関して,トポロジカルフォトニクス分野を先導するデモンストレーションを行うことができた.
以上の状況を鑑みて,本研究は順調に進展していると判断したい.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究を通じて,トポロジカル導波路のテラヘルツ通信応用の可能性が切り拓かれてきた.今後は,伝搬状態の分散関係といった通信速度に関わる基礎特性の評価と理解を進め,一層広帯域動作が可能なフォトニック結晶構造の探求を進めるとともに,多値変調や周波数多重なども利用した伝送速度の追求を行い,実用上重要な外部との入出力インターフェースの開発なども進めていく予定である.
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Research Products
(11 results)