2020 Fiscal Year Annual Research Report
Simulation of coupled electron-phonon transport in two-dimensional materials and heterostructures
Project/Area Number |
20H00250
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 伸也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70239614)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 省電力デバイス / トンネルトランジスタ / 熱電変換デバイス / 2次元物質 / 量子輸送シミュレーション / バンド間トンネル / 電子 / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,2次元物質ヘテロ構造の電子・フォノン連成シミュレータを実現し,デバイス開発の指針を早期に得る環境を構築するこを目的にしている.本年度は,以降の研究の基盤となるよう,電子輸送,フォノン輸送を独立に扱う非平衡グリーン関数法に基づく電子輸送,熱輸送解析プログラムを開発した. 電子輸送シミュレーションに関しては,単一2次元物質における層内・バンド間トンネル電流および2次元物質ヘテロ構造における層間・バンド間トンネル電流を計算するプログラムを開発し,トンネル電流の材料依存性などについて解析を行った.開発した電子輸送プログラムは,密度汎関数理論に基づくバンド構造から出発するため,チャネル材料を容易に変更可能である.その特徴を活かして,種々の遷移金属ダイカルコゲナイド(MoS2, WS2, MoSe2, WSe2, MoTe2, WTe2)に対して,バンド間トンネル電流を計算し,大きなトンネル電流が得られる条件などを解析した.その結果,層内トンネルの場合,トンネル電流の大小は,トンネル有効質量と禁止帯幅の大小で概ね理解できることなどがわかった.また,層間トンネルの場合,衛星谷がトンネルに寄与する場合,大きなトンネル電流が得られることなどがわかった.また,得られた結果をモデル化するため,層間・バンド間トンネル電流を表現する有効質量近似に基づく簡易解析式を導いた.さらに,既開発の高速化手法と比べ,メッシュ点のとり方などがより柔軟な,新たな高速化計算手法を開発した. 熱輸送シミュレーションに関しては,低振動数におけるフォノン振動数の波数依存性が熱コンダクタンスの長さ依存性に及ぼす影響などを解析した.その結果,フォノン振動数が波数の1乗に比例する場合は,超拡散となるが,2乗に比例する場合は,通常の拡散となることなどを見出した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,2次元物質ヘテロ構造の電子・フォノン連成シミュレータを実現し,デバイス開発の指針を早期に得る環境を構築するこを目的にしている.本年度は,当初の研究計画通り,以降の研究の基盤となるよう,電子輸送,フォノン輸送を独立に扱う非平衡グリーン関数法に基づくトンネル電流,熱輸送計算プログラムを開発した.さらに,当初の研究計画を越えて,(1) 層間・バンド間トンネル電流を表現する有効質量近似に基づく簡易解析式の導出.(2) 既開発の高速化手法と比べ,メッシュ点のとり方などがより柔軟な,新たな高速化計算手法を開発した.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,はじめに,電子とフォノンの連成解析プログラムのプロトタイプを開発する.そこでは,1次元モデルの範囲において,電子とフォノンの非平衡グリーン関数輸送方程式を連立して解くプログラムの開発を行う.その際,計算量を削減する手法(R行列法,再帰グリーン関数法,1次元等価モデルなど)の性能およ数値精度を評価し,最適な計算手法の選択を行う.電子フォノン相互作用モデルとしては,変形ポテンシャルモデルおよびはSSHモデルを仮定する.その後,新たに開発した1次元等価モデルを,2次元等価モデルへ拡張する.この拡張により,種々の2次元物質のバンド端付近の電子状態を必要な精度で再現する2次格子最近接モデルの構築が可能になる.最後に,1次元プログラムを2次元格子モデルに拡張し,単層の2次元物質における電子とフォノンの連成解析プログラムのプロトタイプを開発する.そこでは,電子状態は,2次元格子等価モデルを用いて記述し,フォノン状態は,第2近接まで考慮した力定数モデルを用いる予定である. その後は,当初の研究計画にしたがって,単一2次元物質における電子・フォノン連成解析,2次元物質ヘテロ構造における電子・フォノン連成解析,2次元物質ヘテロ構造トランジスタの性能予測,2次元物質ヘテロ構造熱電変換デバイスの性能予測を行う.
|