2023 Fiscal Year Annual Research Report
Simulation of coupled electron-phonon transport in two-dimensional materials and heterostructures
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20H00250
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 伸也 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70239614)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 省電力デバイス / トンネルトランジスタ / 熱電変換デバイス / 2次元物質 / 量子輸送シミュレーション / バンド間トンネル / 電子 / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,2次元物質ヘテロ構造の電子・フォノン連成シミュレータを実現し,デバイス開発の指針を早期に得る環境を構築することを目的にしている.本年度は,弾道輸送シミュレーションの結果から,平均自由行程を抽出する計算手法の開発,ランダム不純物などが作るランダムなポテンシャル分布が,2次元電子状態に与える影響の解析,グラフェンの移動度向上に関するモンテカルロ・シミュレーションを用いた解析などを行った. 不純物散乱や界面ラフネス散乱などの非弾性散乱過程で定まる平均自由行程を,量子輸送計算から抽出する従来の計算手法には,アンダーソン局在の影響が無視できるような,短いチャネル長の試料のみにしか適用できないという問題があった.すなわち,従来手法では,透過率のチャネル長依存性から平均自由行程を抽出するため,短いチャネル長に限って計算する必要があり,高精度の抽出が困難であった.特に,界面ラフネス散乱を考察する場合,ラフネスの相関長より十分長いチャネル長を持つ試料に関する計算が必要であるが,その場合,アンダーソン局在の影響が無視できなくなり,従来手法を用いることができなかった.本年度,弾道輸送領域から拡散領域,局在領域までをすべてカバーすることができる計算手法を新たに開発した.開発した手法では,平均自由行程を系の無次元化抵抗の対数に関する集団平均から抽出する.提案手法を用いて,半導体ナノシートの平均自由行程のチャネル膜厚依存性を有効質量近似に基づき解析し,膜厚が厚い領域では,よく知られた依存性を示すが,膜厚が薄い領域では膜厚依存性が弱くなることなどがわかった.また,膜厚が薄い領域の依存性は,自己無撞着ボルン近似の結果と整合することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,2次元物質ヘテロ構造の電子・フォノン連成シミュレータを実現し,デバイス開発の指針を早期に得る環境を構築することを目的にしている.独立したシミュレータを用いた研究において当初予期しなかった結果が多数現れ,それらの解析等を行っていたため,連成プログラムの開発が遅れている.最終年度に向けて当初の目的を達成できるよう開発を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であり,これまの研究で得られた知見および計算手法をまとめて,低次元系における異常熱拡散に不純物乱れおよび電子・フォノン相互作用が与える影響を解明する.電子とフォノンとの連成解析プログラムを完成させ,ランダム不純物を考慮した異常熱拡散の解析を行う.さらに,低次元系として,これまでの研究対象をひろげ,近年,応用上の重要度が急速に高まっている,極薄半導体および半導体ナノシートにおける電子輸送解析プログラムを開発する.計算手法としては,非平衡グリーン関数法・不連続ガラーキン法・モンテカルロ法を用いる.その際,特に,結晶の異方性を考慮した電子・変調フォノン相互作用,電子状態の異方性を考慮した場合に生じるサブバンド間遷移,乱れたポテンシャル分布による電子状態変調などを計算に取り入れ,従来モデルの詳細化をおこない,極薄半導体および半導体ナノシートにおける電子輸送解析を行い,次世代高性能半導体デバイスの開発に資する知見を得る.
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