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2023 Fiscal Year Annual Research Report

災害で埋没した建物による民家建築史の研究

Research Project

Project/Area Number 20H00277
Research InstitutionNara National Research Institute for Cultural Properties

Principal Investigator

箱崎 和久  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 部長 (10280611)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 海野 聡  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00568157)
大野 敏  横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (20311665)
Project Period (FY) 2020-04-01 – 2025-03-31
Keywords埋没建物 / 民家史 / 養蚕 / 考古学 / 建築史
Outline of Annual Research Achievements

5月28日には、群馬県教育委員会の協力を得て、長野原町のやんば天明泥流ミュージアムにて、関係自治体の文化財担当職員を対象として、2022年度におこなった民家調査の成果報告会を開催し、新たな情報提供を求めた。中之条町については、『中之条町誌 民家』(昭和53年)で一定の調査がなされていたため、今回は悉皆調査はおこなわなかったが、比較対象とすべき民家の抽出のため、情報収集や現地視察をおこなった。
そうして得た情報をもとに、東京大学および横浜国立大学の調査チームが、中之条町3件、長野原町2件、嬬恋村2件、東吾妻町1件の民家の主屋、計5件の民家付属屋、および長野原町2件、嬬恋村1件の宗教建築の調査をおこなった。そのなかでも中之条町のJ家主屋は改造が大きいものの、原型は18世紀中期に遡る可能性が高く、吾妻郡に現存する古民家の中でも最高齢に属するものと推察される。とすれば、天明泥流(1783年)以前の民家となり、八ッ場ダム開発関連事業の発掘調査で検出した民家と比較できる民家となる。小屋が小さく、比較的新しい時期の養蚕民家とはやや異質に感じられ、養蚕との関連も追究しつつ現存する民家の中での位置づけも検討する必要がある。
建築部材に関連する調査は、石川原遺跡以外の部材についても試みてみたが、やはりなかなか難しく、現地調査をしても昨年度の経験から、労力がかかるわりには成果が上がらない可能性があることが予測できたため方向転換をすることにした。一つは建築部材の継手や仕口、あるいは床の組み方などの建築技法、もう一つは主屋の規模や平面形式について、現存民家と比較して相違あるいは共通点についての検討を開始し、作業を継続している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初予想していたようには進捗しない部分もあるが、資料の性格から自助努力では限界があることを踏まえれば、全体的には順調と考えている。
出土部材の調査は、やはり上部構造の部材が発掘現場に必ずしも残っているわけではなく、残っていてもその部材の使用部位が判明しなかったり、上部構造を考えるには十分でないなど、考古資料ならではの困難があることを改めて考えさせられた。天明泥流により倒壊したまま埋没したのではなく、当時、泥流後の民家再建に向けて、使用できる部材を埋没後に掘りだしたらしいなど、復興のあり方とも関連している。いずれにしても、発掘調査現場における視点が重要である。
一方の現存民家調査については、群馬県や各町村の文化財関連部局の協力のもと、詳細調査を進めることができ、中之条町では天明泥流以前に遡る可能性のある民家を見出すことができた。これは成果報告会による情報提供依頼およびそれによる情報収集の成果である。他の詳細調査をおこなった民家は、基本的には養蚕農家の特徴を備えた民家で、民家建築としての興味深い事例の収集をおこなうことができた。養蚕の導入とともに、建築としての変化を実例で示すことができれば理想だが、比較的新しい民家、あるいは大きく改修を受け、悉皆調査による外観の調査からは古い様相がわからない民家が多く、これはこの地域の経済的豊かさを示している可能性があるのだが、それらの解明、および天明泥流でみつかった民家との接点を探ることが課題である。重点的に多数の詳細調査を実施できればよいが、予算的あるいは時間的な制約から難しいため、将来の研究の基礎となるような資料を残し、また利用できるよう、関連自治体とも協議を深めたい。

Strategy for Future Research Activity

2024年度は研究の最終年度に当たるため、補足的な詳細調査をおこなうとともに、調査のまとめとして報告書を刊行したい。またこれまでの悉皆ならびに詳細調査のデータを群馬県や関係各町村に提供し、今後の文化財指定や保存につなげていくことができるようにしたい。
報告書のまとめ、および関係機関への周知や今後の資料の活用、さらには調査による価値づけができた物件の文化財指定などのために研究会を開催したい。ここでの発表をもとに、報告書の基礎データを揃えていくこととしたい。
具体的な作業としては、発掘調査で判明する民家やその部材については、細部技法の調査と平面形式の資料収集を継続する。民家調査は数件の補足の詳細調査をおこない、特徴の把握に努める。

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Published: 2024-12-25  

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