2020 Fiscal Year Annual Research Report
超高温域の状態図研究と高比強度クロム基耐熱材料の創製
Project/Area Number |
20H00298
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大森 俊洋 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60451530)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 郁雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 上席研究員 (20250714)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 状態図 / 耐熱材料 / 共晶組織 / クロム |
Outline of Annual Research Achievements |
状態図の実験的決定:超高温DTAを用いて様々な純金属の融解を測定し、高精度な校正を行った。Cr中不純物濃度と融点の関係を系統的に調査し、純Crの融点を1861℃と決定した。また、超高温域における相平衡実験のため、誘導加熱式超高温炉の熱処理手法の検討を行った。種々の純金属の融解反応を利用して温度精度の検証を行い、2000℃までの高温域において十分な温度精度で熱処理ができる手法を確立した。この熱処理方法により様々な組成のCr-Si二元系合金を平衡化熱処理し、電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)を用いて相平衡を決定した。また、DTAを用いて相変態温度を決定した。その結果、Cr-Si二元系状態図を全組成域に渡って決定したと共に、以下の点が新たに判明した。(1)Cr5Si3相周辺の状態図は液相&/Cr3Si+Cr5Si3の共晶である、(2)これまでの状態図に存在していたCr5Si3相中の相変態は無い、(3)化合物相の固溶幅を新たに決定した。さらに、Cr-Ta二元系状態図の決定に着手した。 熱力学解析:状態図計算のため、上記で決定したCr-Si系状態図を用いてCALPAHD法により熱力学解析を行った。Cr-Si二元系の熱力学パラメータを決定することができた。副格子モデルにおけるエンドメンバーの生成エンタルピーは第一原理計算の結果を用いた。これにより、実験状態図を計算により再現できることを確認した。 ミクロ組織制御と高温強度:Cr-Siは(液相)/(Cr固溶体)+(Cr3Si)の共晶系であり、両者の分率とミクロ組織が強度に関係していると考えられる。そこで、強度に寄与している組織因子を詳細に特定するため、Si濃度と組織サイズを変化させて機械的性質を評価した。その結果、共晶組織を粗大化させても大きな強度低下は見られず、初晶の組織形態により強く依存することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温域における熱分析や熱処理を十分な精度で実施して相平衡を決定することは本研究における主要な目的のひとつであり、Cr、Cr-Si系で2000℃までの高温域で状態図を決定できたことは意義が大きい。また、ミクロ組織と強度の関係において重要な知見を得ることもできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Cr、Cr-Si系で検討した2000℃までの超高温域における熱分析、熱処理手法を活かし、他の合金系においても相平衡実験を進めていく。今後はCr-Siに対する添加元素の影響を調査し、実験状態図、熱力学解析、ミクロ組織と機械的性質の評価を深めていくことが、新規耐熱材料の開発に向け重要になってくると考えられる。
|