2021 Fiscal Year Annual Research Report
Material design and mechanistic study of carbon electro-catalysts for fuel cells
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20H00316
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 潤児 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (40227905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有賀 克彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (50193082)
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
近藤 寛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80302800)
神原 貴樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90204809)
武安 光太郎 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90739327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 窒素ドープカーボン触媒 / 酸素還元反応 / ピリジン型窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピリジン型窒素(pyri-N)カーボン触媒による酸素還元反応のメカニズムを研究してpyri-Nの役割の重要点が明らかとなった。固体高分子形燃料電池は通常強酸電解質で作動する。pyri-Nは強酸電解質中でプロトン化しピリジニウム(pyri-NH+)へと変化する。本研究では、次式に示すように、pyri-NH+の還元と酸素分子吸着が連動することが明らかとなった。pyri-NH+ + e- + O2 → pyri-NH + O2,a ここで重要な点は、還元に使用された電子が炭素共役系の反結合性π軌道(π*)に流入し、pyri-Nに隣接する炭素原子における電子密度が高くなる。この電子が、酸素分子と炭素原子の結合に使われる。すなわち、π共役系に流入するや否や酸素分子によって吸収されるため、電気化学的pyri-NH+の還元と熱反応である酸素分子吸着が連動する。ここで、重要なのは酸素分子の吸着エネルギーが上記連動反応の酸化還元電位を向上させることにある。すなわち、酸化還元反応の平衡を右へとシフトさせるのである。この結論は、pyri-N含有分子(フェナントロリン)をモデル触媒とした実験で立証された。すなわち、0.1 M硫酸中でフェナントロリンモデル触媒に電位を印加してpyri-NH+ + e- → pyri-NHをex-situ XPSで観測する実験において、窒素雰囲気では反応の進行が観測されなかったが、酸素雰囲気では還元が0.3 V vs RHE観測された。すなわち、酸素分子の吸着が還元高める。この実験結果は、DFT計算によっても支持された。 さらに、重要な知見は、pyri-NH+は親水性であり、水和の効果によって上記の連動反応の平衡が左側へとシフトし、還元電位が低下することである。この水和が酸電解質中で窒素ドープカーボン触媒の活性が低下する原因であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
pyri-Nの役割を解明した点は窒素ドープカーボン触媒のメカニズムにおいて学術的に高い意義がある。すなわち、酸電解質中での窒素ドープカーボン触媒の活性劣化が燃料電池技術の最大の課題であり、その原因は全く不明であった。本研究において、pyri-Nのプトロン化で生じるpyri-NH+がまず起こり、pyri-NH+ + e- + O2 → pyri-NH + O2,a という還元反応によって酸素分子が吸着することが明らかとなった。この反応は連動しているため、pyri-NH+が還元しないと酸素分子は吸着できない。したがって、酸素還元反応の最初の素過程である酸素吸着が起こる電位は、pyri-NH+の還元電位で決まることになる。この論文はAngewandte Chemieにおいて査読者から高く評価された後に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
pyri-Nの役割が明らかとなったので、この知見を基にして触媒設計を進める。すなわち、pyri-NH+の水和が活性劣化の原因であることが明らかとなったので、疎水性の触媒を調製することが活性向上の指針となる。疎水性触媒を調製するにはロータス効果を利用して、中空構造を有するカーボン触媒を調製する予定である。また、疎水性によりプロトン供給能の低下が予想されるので、プロトン供給能を有するシリカ微粒子を中空内に導入することを考えている。一方、pyri-Nが関わる反応素過程について詳細に調べる予定である。
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