2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H00325
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立間 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90242247)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 光物性 / 先端機能デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、局在表面プラズモン共鳴を示す材料を半導体と組み合わせたときにプラズモン誘起電荷分離(PICS)現象が起きることを見出し、光電変換や光触媒、その他さまざまな用途開発を行った。その中で、PICSは正孔放出現象を含む場合があることが明らかとなったので、その詳細と応用について研究を行っている。 本年度は、熱正孔放出プロセスを利用して、偏光照射により3次元的なナノ構造を作製した。具体的には、酸化チタン上の金ナノキューブを用いて、これに円偏光を照射することによって、らせん構造を持つ酸化鉛を担持することができた。従来は2次元的な構造であったが、3次元的な構造に移行することで、より広い展開が期待される。 また、光吸収の強いアンテナ部分と、熱電子注入効率、熱正孔放出効率の高い電荷分離部分を電磁気的にカップリングさせることでPICSの外部量子収率を高める手法を新たに開発した。具体的には、酸化チタン上に小さな金ナノスフィア(電荷分離効率は高いが光吸収効率は低い)と大きな金ナノキューブ(電荷分離効率は低いが光吸収効率は高い)を担持し、それらを電磁気的にカップリングさせた。すると、後者が光捕集アンテナとして働き、捕集したエネルギーを前者に集中させ、前者は電荷分離ユニットとして働き、酸化チタンへの電子注入と正孔反応が起きた。これにより、それぞれの長所(前者の高い電荷分離効率と後者の高い光吸収効率)を活かして外部量子収率を向上できることが示された。 また、プラズモニックナノ材料として、PICSに酸化モリブデン(II)を利用できることを示した。酸化モリブデン(II)は高価な貴金属である金と同様の波長域で局在表面プラズモン共鳴を示すことが明らかにされていることから、PICSにおいても、金に対する代替材料の候補となり得ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の、交付申請時の実施計画では、正孔トラップサイトの検討、熱正孔放出プロセスを利用した、3次元的なナノ構造の構築、光吸収の強いアンテナ部分と、熱電子注入効率、熱正孔放出効率の高い電荷分離部分を分け電磁気的にカップリングさせる手法の構築を目指した。 熱正孔放出プロセスを利用して、偏光照射により3次元的なナノ構造の作製について達成することができた。円偏光を利用してらせん構造を作るという、新しいナノ構造作製に成功した。 また、金ナノキューブを用いた光捕集ナノアンテナと金ナノスフィアを用いた電荷分離ユニットのカップリングにより、前者の高い光吸収効率と後者の高い電荷分離効率を同時に活かすことで、PICSの外部量子収率を向上することができた。 正孔トラップサイトについては、電場が強い場所であるという幾何学的配置についてはさらなる裏付けがとれたが、化学的な構造の解明については、その候補を挙げる過程にあり、当初の計画よりやや遅れがある。一方で、貴金属以外の金属酸化物をプラズモニック材料に用いたPICSを達成できた点は、当初の計画以上の進展と言える。これらを総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
熱正孔放出プロセスを利用したナノ構造作製に関しては、従来よりも対称性の高い構造を含め、構造のバリエーションを増やすほか、材料のバリエーションを増やすなどして、さらなる一般化を行う。加えて、応用展開・用途開発についても検討を進める予定である。 光捕集ナノアンテナユニットと電荷分離ユニットを組み合わせるシステムについては、光触媒などの応用に資するようにさらなる開発を進めて行く予定である。二つのユニットの材料や形状、組み合わせ方などを検討する。 並行して、正孔放出のメカニズムについても検討を続ける。検討したメカニズムに基づいて、その効率を高めるための検討を行う。 また、半導体を使用しない正孔放出系についても検討を行うなどして、正孔放出プロセスの一般化を進めることも検討する。
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