2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H00325
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立間 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90242247)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 光物性 / 先端機能デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、局在表面プラズモン共鳴を示す材料を半導体と組み合わせたときにプラズモン誘起電荷分離(PICS)現象が起きることを見出し、光電変換や光触媒、その他さまざまな用途開発を行った。その中で、PICSは正孔放出現象を含む場合があることが明らかとなったので、その詳細と応用について研究を行っている。 熱正孔放出プロセスについては2021年度まで、銀の酸化溶出、酸化鉛(IV)の部位選択的析出、酸化鉛の酸化マンガン(IV)へのガルバニック置換などを行ってきた。2022年度には、半導体である酸化チタン上に担持したプラズモニック金属である金のナノ粒子上への鉄(II)イオンの酸化により、オキシ水酸化鉄を析出できることを見出した。また、それを適切な条件下でアニーリング処理することにより、磁性体であるヘマタイトに変換できることも見出した。金ナノ粒子にヘマタイトを析出させたナノ複合体は、プラズモン共鳴に基づく磁気円偏光二色性と磁性体に基づく磁気円偏光二色性を示し、またそれらの相互作用に基づく磁気円偏光二色性の増強効果も見られた。このように、磁気光学効果を示す材料としての応用が可能になり、熱正孔放出プロセスの応用展開の可能性が広がった。 また、熱正孔放出プロセスと比較し、また応用の幅を広げるために、熱電子放出プロセスについても検討を進めてきた。球状銀ナノ粒子や立方体上金ナノ粒子の上に、クエン酸存在下での熱電子放出プロセスによって、銀を部位選択的に析出させられることを確認した。回折限界を超えた光ナノ加工の観点からは、これによって加工手段の選択肢が大幅に増え、より幅広い加工が可能になった。 さらに、半導体における(熱)正孔放出プロセスや、(熱)電子放出プロセスとも比較するために、異方形状を持つ半導体ナノ粒子の合成を試み、酸化亜鉛の六角ナノプレートを合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
熱正孔放出による析出物質としては、酸化鉛や酸化マンガンだけでなく、酸化鉄にも拡張できるようになった。これによって磁性体の利用が可能になり、磁気光学効果を示すナノ材料などへ展開できるようになった。新規材料への展開は計画通りだが、磁気材料への展開は計画以上のものである。磁気材料とキラル材料の組み合わせによる磁気キラル二色性への展開の可能性も開けてきた。 また、熱正孔放出プロセスだけでなく、熱電子放出プロセスへも展開することができた。これについては、類似プロセスは観測されていたと考えられるが、我々の得意とする部位選択的反応によって、様々な応用展開の可能性が開けてきた。 これらのことから、当初の計画以上に進展していると結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
熱正孔放出プロセスの研究については、磁性体への展開が可能になったことを踏まえ、より優れた磁気光学効果の観測などを目指していく。こうして、熱正孔放出プロセスの活用を試みていく。 また、熱正孔放出プロセスを足掛かりにして、熱電子放出プロセスについての研究にも力を入れる予定である。そのために、プラズモニック材料と組み合わせるための半導体として、これまではn型半導体を用いてきたが、これからはp型半導体も使用していく予定である。それにより、熱電子放出プロセスの活用を試みる。 さらに、金属ナノ粒子だけでなく半導体ナノ粒子も用いることにより、半導体の励起による(熱)正孔放出プロセスや、(熱)電子放出プロセス、それらによる部位選択的析出反応についても検討を行っていく。 それらの検討により、単にプラズモニック金属ナノ粒子からの熱正孔放出プロセスだけでなく、材料面でも反応面でも現象面でも、より広く展開できるようになると期待される。
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Research Products
(26 results)