2020 Fiscal Year Annual Research Report
ナノバイオAIデバイスによるスーパー耐性菌出現予測システムの創出
Project/Area Number |
20H00329
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
馬場 嘉信 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30183916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スーパー耐性菌 / ポア空間 / 単一センシング / 定量検出 / シグナル / 特徴量 / 機械学習解析 / 薬剤刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、ポア空間でのセンシングによる(1)細菌の定量的な検出と電気的な識別と(2) 薬剤刺激による細菌性状の変化に関する検討を行った。 (1)では、デバイス表面への吸着防止と流体駆動を駆使して細菌をシグナルとして検出し、当該シグナルのパターンからポアを通過した検体を識別した。デバイス表面への吸着により定量的な検出は困難であり、陰イオン性界面活性剤を用いてこれを防止した。また、電気的な駆動だけでは、検体の表面電荷に由来して検出頻度が異なったため、流体的な駆動を利用して包括的な検出法を構築した。100秒間の計測により~104 particles/mLの定量下限で検出可能であった。また、シグナルのパターンに基づく細菌識別のための機械学習システムを開発した。パターンを示す特徴量を抽出して機械学習解析を行い、ポアを通過する検体を識別した。また、識別率からのフィードバックによりポア長を最適化し、5種類の検体をそれぞれ計測したシグナルを87%の精度で指揮ベル出来ることを示した。 (2)では、緑膿菌の感受性株とスーパー耐性株をモデルとし、ポアによる単一細菌検出に基づき薬剤刺激が誘起する細胞性状の変化を解析した。カルバペネム系のイミペネムを使用し、その作用機序は細胞壁合成の阻害であるため、細菌細胞のサイズが変化すると想定される。イミペネム濃度を固定のもと刺激時間に対して、いつ・どのように細胞性状の変化がシグナルに反映されるかを検討した。シグナルから細菌細胞の物理的な性状に反映するパラメーターを解析したところ、サイズに関連するシグナルの強度が感受性株でのみ増加し、10分の刺激でその変化が観察可能であった。本結果は、ポア空間での単一細菌センシングに基づき、薬剤刺激に対する細菌性状の変化から薬剤耐性が識別できる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、ナノバイオAIデバイスによるサーベイランスのための基盤技術を開発した。具体的には、(1)単一細菌センシングに基づく定量・検体識別、および(2)薬剤刺激が誘起する細胞性状の変化の解析技術である。 (1)では、ヒト感染・動物感染・環境中の耐性菌を対象としたサーベイランスを目指し、定量検出のレンジと混合検体の識別が課題となる。これは、細菌や夾雑物を含む混合検体を対象とする可能性が高く、また、検体含有の細菌種や細菌数が未知なためである。本年度に開発した技術は、様々な物理的な性質を示す細菌種を包括的に検出・定量できるポテンシャルを有する。シグナルパターンに基づく機械学習解析との融合は、混合検体へ本センシングを展開できる可能性を有する。加えて、本年度構築した機械学習システムにより、情報科学的なアプローチから計測系へのフィードバックが可能な技術的な基盤も構築している。 (2)では、薬剤刺激が誘起する細胞性状の変化を解析し、感受性株とスーパー耐性株の間でその変化の差異を見出した。本年度では、イミペネム(カルバペネム系)を対象とする解析を行い、感受性株ではその変化がシグナルの強度に反映され、また耐性株ではその変化が僅かであることを確認した。本成果は、ポア空間でのセンシングが細菌の性状変化を反映できることを示す技術的な指針であるとともに、薬剤刺激による性状変化に基づき、耐性薬剤の同定ができる可能性を提示する。さらに、上述の成果である機械学習解析による識別・定量との融合することで、細菌種・耐性薬剤に関する解析へと展開できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降では、(1)スーパー耐性菌を含む混合検体を対象とするセンシング、および(2) 他の作用機序を有する薬剤への応答解析を中心に進める。 (1)では、混合検体に含まれる細菌を識別して定量検出する検討を行い、スーパー耐性菌を含む細菌種の混合検体へと展開する。そのために、光・電気同時計測を活用し、光学的な観察に対して電気的な計測(シグナル)と機械学習解析による回答を照合し、その精度を評価する。不十分な精度の場合は、その指標に基づきポア長を代表とする計測条件へとフィードバックを行い、最高精度での識別を達成する。その際、細菌濃度の定量下限と高い識別率を両立できる計測条件を確立する必要があり、流量やポア内の電場強度なども検討項目とする。 (2)では、他作用機序の薬剤や刺激濃度・時間、耐性機序、細菌種にも当該解析法を展開するとともに、その変化を定量的に表現する。具体的な薬剤としては、アミカシン(アミノ配糖系)とシプロフロキサシン(ニューキノロン系)を用いる刺激も行い、様々な刺激条件(薬剤濃度・刺激時間)に対して解析する。他のスーパー耐性菌も同様に解析を行い、耐性機序や細菌種依存的な変化の傾向が生じるかを調べる。また、各薬剤に対して細菌の性状変化が反映される特徴量を調べ、その特徴量が刺激条件や耐性機序、細菌種に応じてどのように変化するかを包括的に解析する。これらの検討により耐性識別のための手法構築を行い、サーベイランスへと展開する。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Digital Pathology Platform for Respiratory Tract Infection Diagnosis via Multiplex Single-Particle Detections2020
Author(s)
Arima A., Tsutsui M., Yoshida T., Tatematsu K., Yamazaki T., Yokota K., Kuroda S., Washio T., Baba Y., Kawai T.
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Journal Title
ACS Sensors
Volume: 5
Pages: 3398, 3403
DOI
Peer Reviewed
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