2021 Fiscal Year Annual Research Report
ナノバイオAIデバイスによるスーパー耐性菌出現予測システムの創出
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20H00329
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
馬場 嘉信 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30183916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スーパー耐性菌 / サーベイランス / オンサイト展開 / 単一細菌センシング / 自己駆動型デバイス / 電気泳動方向 / センシングシステム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、薬剤耐性菌サーベイランスに向けて、マイクロポアを用いた単一細菌センシングをオンサイトに展開するために、1. デバイス開発と 2. センシングシステム構築に関する検討を行った。 1. では、計測溶液を自己駆動的にマイクロポア内に充填可能なデバイスを開発した。単一細菌センシングは予備的にマイクロポアを計測溶液で満たすことが必要であるが、デバイス材料の疎水性に由来してオンサイトでの溶液充填は困難である。そこで、親水性を持続可能な表面を有するデバイス開発を行い、当該表面はポリエチレングリコールによりシリコーン樹脂表面を単一ステップで修飾することで作製した。親水性表面を利用することで自己駆動的にマイクロポアが計測溶液で満たされ、マイクロポアを用いた電気計測が可能となった。モデル粒子(ポリスチレンビーズ)を対象とした計測により、乾燥状態で30日間保管したデバイスを用いてもセンシング性能に変化がないことを確認した。さらに、30日間保管したデバイスを用いて、大腸菌のサイズ解析が可能であることも実証した。 2. では、電気泳動の方向が未知の細菌サンプルでもセンシング可能なデバイス開発とシステム構築を行った。単一細菌センシングではマイクロポアまで細菌を電気泳動して計測を行うが、細菌種および同一細菌種の株間で電気泳動の方向が異なる場合があるという課題に直面した。このため、単一細菌センシングでは細菌サンプルの泳動方向が既知である必要があった。この課題を解決するために、電気的に絶縁されたマイクロポアを二つ有するデバイスを創製して、これらのポアを用いて異なる方向に電気泳動を行い、同時にセンシング可能なシステムを構築した。当該システムにより、電気泳動の方向が未知の細菌サンプルでもセンシング可能であることを実証した。また、オンサイト展開に向けて、当該システムを採用した可搬型装置の開発も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬剤耐性菌サーベイランスの実現には、単一細菌センシングによる耐性菌解析に加えて、当該センシングをどのようにオンサイト展開するかも重要な検討事項となる。本年度では、単一細菌センシングをオンサイト展開するための 1. デバイス開発と 2. システム構築を推進した。 1. では、本研究の目指すサーベイランスはヒト感染・動物感染・環境中の耐性菌を対象とするため、単一細菌センシングをオンサイトで行うことが必須となる。可搬型のセンシングシステムだけでなく、オンサイトでハンドリング可能なマイクロポアデバイスの開発も重要な検討となる。これまでのデバイスは作製直後に使用することが前提であり、デバイス材料の特性に由来して時間経過により計測溶液をマイクロポアに充填できなくなるという課題があった。オンサイトでの単一細菌センシングは保管したデバイスの使用が想定され、自己駆動的に計測溶液を充填可能なデバイス開発が必要であった。本年度に開発したデバイスは、乾燥状態で保管してもセンシング性能を維持しており、大腸菌のサイズ解析も達成したため、センシングシステムと組み合わせることでオンサイト展開を実現することができる。 2. では、細菌種や同一細菌種の株間で電気泳動の方向が異なる場合があるという、当初想定していなかった課題に直面した。本年度では、電気的に絶縁された二つのマイクロポアを有するデバイスの開発、および各ポアの電気計測を同時に行うことができるシステムの構築を進めた。上記検討により、電気泳動の方向が未知の細菌サンプルでもセンシングができる技術を確立した。また、当該システムの装置化により、電気的に絶縁された二つのマイクロポアを同時計測することができるため、細菌サンプルのセンシングを効率的に進めることが可能である。 以上の理由から、オンサイト展開に向けたデバイス開発とシステム構築を達成したため、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度では、今年度に構築したデバイスとシステムを用いて、単一細菌センシングを基軸とする細菌種・薬剤耐性を一気通貫して解析可能なプラットフォームの構築を進める。 まず、スーパー耐性菌(緑膿菌と大腸菌、アシネトバクター)の感受性株と薬剤耐性株をモデルとして、細菌種と薬剤耐性に関する検討をそれぞれ進める。細菌種では、各株の電気泳動方向とシグナル特徴量に関するデータを収集して、機械学習のモデル構築を進める。また、進捗状況に応じて、他の重要細菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)への展開も行う。薬剤耐性では、イミペネム(β-ラクタム系)やアミカシンなどを中心に、抗菌薬刺激に対する各株の応答を解析する。その際、抗菌薬刺激の条件(e.g., 抗菌薬濃度や刺激時間)に対する応答が細菌種によって異なるのかどうかも明らかにする。抗菌薬刺激の前後によるシグナル特徴量の変化を定量的に評価する指標(e.g., 特徴量分布の重なり度合い)を用いて、薬剤耐性の評価を進める。 上記検討ののち、細菌種・薬剤耐性を一気通貫して解析可能なプラットフォームを構築する。本プラットフォームでは、(1)サンプルに含まれる細菌の検出、(2)単一シグナルの機械学習により推定した細菌種に基づく候補抗菌薬の選定、(3)候補抗菌薬に対する薬剤耐性の解析を行うことを目指す。以上の検討を通じて、薬剤耐性菌サーベイランスを実現する技術基盤構築を行い、スーパー耐性菌の出現予測への展開を進める。
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[Presentation] ナノバイオデバイスを用いた単一生体粒子検出2021
Author(s)
有馬彰秀, 筒井真楠, 吉田剛, 横田一道, 立松健司, 山﨑智子, 黒田俊一, 谷口正輝, 鷲尾隆, 川合知二, 馬場嘉信
Organizer
応用物理学会 有機分子・バイオエレクトロニクス分科会 研究会 「時代を切り拓く有機分子・バイオエレクトロニクス研究」(応用物理学会M&BE研究会)
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[Book] 医用工学ハンドブック2022
Author(s)
佐久間 一郎、秋吉 一成、津本 浩平編集
Total Pages
544
Publisher
エヌ・ティー・エス
ISBN
978-4-86043-735-0
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