2021 Fiscal Year Annual Research Report
Cooperativity of motor proteins using nano fabrications.
Project/Area Number |
20H00330
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横川 隆司 京都大学, 工学研究科, 教授 (10411216)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | あ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、1)ナノピラー上に固定したキネシンによる微小管の双方向運動の評価、2)微小管の伸長速度に依存した曲げ剛性が集団運動に与える影響の評価、3)機械学習を用いた多層パーセプトロンによる微小管の曲げ剛性推定、という課題を実施した。具体的には、以下の通りである。
1)これまでに、キネシン密度が低く、分子混雑環境を模した場合に微小管の双方向運動が観察されてきた。そこで、これまでに確立した金ナノピラー構造を用いて微小管を何分子のキネシンが輸送している場合に双方向運動が生じるのかを評価した。ATPの濃度を変更した実験も併せておこなった結果、微小管の双方向運動はキネシンによって運動方向を一次元に制限されたブラウン運動であることと、キネシンと微小管の間の結合がすべて弱結合状態になっている場合に生じていることが示唆された。今後、ケモメカニカルモデルを用いてこの現象を理解する。 2)微小管の曲げ剛性は、外力に対する形状変形を測定することで推定した。変形計測の際、微小管形状の二値化時の位置決定精度が曲げ剛性の測定精度に影響する。このため、曲げ剛性を正確に測定するために、nmレベルの位置決定精度が必要であることがわかり、それにより、微小管の剛性が伸長速度の増加とともに3つの段階を経て低下することがわかった。さらに、伸長速度に依存する曲げ剛性が、集団運動におけるパターン形成に影響を与えることを明らかにした(J. Nanobiotechnology, 2021)。 3)位置決定精度が曲げ剛性の測定精度に影響を与えるため、既報では曲げ剛性の値にばらつきが大きかった。そこで、機械学習を用いて微小管の剛性を推定する技術開発を進めた。あらかじめ曲げ剛性を設定した微小管モデルを用いて、機械学習ベースの多層パーセプトロンを構築し、熱揺らぎのある微小管の時系列画像を入力して微小管の曲げ剛性値を予測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
あそれぞれの研究項目について以下の成果が得られており、進捗は概ね順調である。1)微小管の双方向運動の評価を実施し、キネシン分子数との関係を実験的に明らかにした。2)微小管の成長速度と曲げ剛性の新しい関係を明らかにし、微小管の曲げ剛性の設計方法を確立して、その集団運動への影響を調べることに成功した。3)多層パーセプトロンモデルにより、模擬微小管の曲げ剛性を相関係数0.96で予測することに成功した。今後は、実験から得られた蛍光画像に本手法を適用し、その有効性を確認する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、微小管の曲げ剛性を測定・設計するためのロバストな定量的手法を確立し、微小管グライディングアッセイや集団運動などの運動特性に及ぼす影響をin vitroで明らかにすることである。上記の課題1)については、観察された双方向運動を説明する数理モデルの構築によりその理解を深め、論文執筆投稿を進める。課題3)については、あらかじめ曲げ剛性を設計した微小管を用いて、個別の微小管の曲げ剛性がその集団行動にどのような影響を与えるかを調べる。微小管の集団運動で形成されるパターンを評価するために、ディープラーニングを用いた認識技術を導入する。また、機械学習に基づくバイアスのない正確な微小管の曲げ剛性推定法を開発し、多様なソースの実験データに適用できるようにする。
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