2021 Fiscal Year Annual Research Report
Novel cancer radiation therapy employing monochromatic X-rays and nanoparticles
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20H00331
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉野井 冬彦 京都大学, 高等研究院, 特定教授 (10802283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 寛之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, グループリーダー (20373243)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 単色X線 / 高Z元素 / ナノ粒子 / がんスフェロイド / アポトーシス / DNA二重鎖切断 / オージェ電子 / K端エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
ガドリニウム、ヨウ素、金や銀などの高Z元素にX線を照射すると光電効果によりオージェ電子の放出がある。オージェ電子は短距離しか飛翔せず低エネルギーであるが、DNA切断を引き起こし、がん細胞を殺傷する力が強い。この効果を用いて新規のがん治療を開発するための基礎研究を行うことが私たちの目的である。令和2年度の研究で、ガドリニウムを担持したナノ粒子をがんスフェロイドに取り込ませ、50.25 keVの単色X線を照射することで、がんスフェロイドがバラバラになり消滅することを明らかにしている。令和3年度はヨウ素担持ナノ粒子を合成し、がんスフェロイドに取り込ませ、単色X線照射によるがんスフェロイド破壊およびアポトーシス、DNA二重鎖切断を検討することにより、がんスフェロイド消滅のメカニズムを検討した。 合成したヨウ素担持ナノ粒子を卵巣がんの細胞から作られたがんスフェロイドに取り込ませた。その結果、がんスフェロイドを構成するがん細胞内にガドリニウムが取り込まれ、細胞核の近傍に局在した。SPring-8にて、ヨウ素担持ナノ粒子を取り込んだがんスフェロイドに33.2 keVの単色X線を照射した結果、がんスフェロイドがバラバラになり消滅することを明らかにした。また、オージェ電子によるDNA二重鎖切断が起きるかどうかを33.0, 33.2, 33.4 keVの単色X線を照射後、がんスフェロイドをγ2AXに対する抗体を用いて検討した。このとき、33.2 keVの単色X線照射で最も高いDNA二重鎖切断が起きていることを明らかにした。さらにTUNELアッセイによりアポトーシスを検討したところ、DNA二重鎖切断同様、33.2 keVで最もアポトーシスの割合が高くなることを明らかにした。この単色X線照射による効果は非常にシャープであり、高Z元素のK端エネルギーのところで強く効果が出ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガドリニウムやヨウ素といった高Z元素は通常細胞内に容易に取り込まれない。そこで私たちはナノ粒子を用いることで、高Z元素を容易に細胞内に運搬し、細胞核近傍に蓄積すること(DNAの近くに高Z元素を蓄積すること)を可能にした。また研究のもう一つの目標であるがんスフェロイド消滅のメカニズムを明らかにすることができた。これはTUNELアッセイを用いたアポトーシス検出により明らかにした。また単色X線照射後にDNA二重鎖切断が起きることも明らかにすることができた。これらの結果は、ナノ粒子により高Z元素がDNAの近くに蓄積することで飛距離が短いオージェ電子がDNAを切断し、がん細胞のアポトーシスを誘導することを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で高Z元素をナノ粒子にのせて細胞に入れると細胞核の近くに局在させることができることを明らかにした。今後の研究では高Z元素をさらに核内に移行させることを試みる。 もう一つの実験は、低酸素条件におけるオージェ電子によるがんスフェロイド消滅効果の検討である。私たちの体に出来る腫瘍の多くが、内部は低酸素条件である。従来のがんの放射線治療は低酸素条件で効果が低いことが課題とされている。従来の放射線治療は白色X線(さまざまなエネルギーを持ったX線)を照射した場合、細胞内の水と反応して活性酸素が生じ、この活性酸素がDNAを損傷することでがん細胞を死滅させる(間接効果)。ところが、腫瘍内は低酸素であり、活性酸素が生じづらいことから効果が低いとされている。一方で、私たちが検討しているオージェ治療はオージェ電子が直接DNAを切断する(直接効果)ため低酸素条件でも効果が期待できる。
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Research Products
(8 results)