2020 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドギャップ半導体MOS界面欠陥の正体の横断的解明
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20H00340
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤ノ木 享英 (梅田享英) 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10361354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 俊晴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (20360258)
原田 信介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (20392649)
五十嵐 信行 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (40771100)
磯谷 順一 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (60011756)
染谷 満 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (60783644)
松下 雄一郎 東京工業大学, 物質・情報卓越教育院, 特任准教授 (90762336)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電流検出型電子スピン共鳴 / 第一原理計算 / ワイドギャップ半導体 / MOS界面 / 4H-SiC / PbCセンター / 炭素ダングリングボンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の実験の主たる武器は電流検出型電子スピン共鳴分光(EDMR)となるが、本年度は装置の不調(後述)により、理論研究を中心に推し進めた。 本研究では第一原理計算を担当する松下グループ(東工大)が分担者として加わっている。「界面の第一原理計算」は系のモデリングや精度の上で発展途上だと私達は考えていて「実験結果に立脚した第一原理計算を行う」という方針を立てている。そこで、実験的に確定した炭化ケイ素(4H-SiC)の代表的な界面欠陥「PbCセンター(界面炭素ダングリングボンド欠陥)」を出発点として、その第一原理計算に取り組んだ。PbCセンターの第一原理計算はすでに第一報を2020年(APL誌)に行っているが、この計算には"続き"がある。4H-SiC(0001)面においてPbCセンターの作り方は原則2通りある。私達はこれを「type1」「type2」と名付けた。第一報で報告したのはtype1(価電子帯側PbC)である。もう1つのtype2は「伝導帯側PbC」となっており、その準位が浅すぎてEDMR分光では観測されにくいことが分かった。また、type1とtype2はエネルギー準位だけでなく化学的性質も大きく異なっていることが予測された。今後さらにPbCセンターtype2の計算を進めて、その役割を明らかにする予定である。 界面欠陥/界面準位の電気的影響を決定するには、エネルギー準位位置の確定が重要である。未発表のEDMRデータ(EDMR信号のMOSゲートバイアス依存性)と、新たに行った電気容量評価とを組み合わせることで、PbCセンターtype1の(0/-)準位位置を実験的に決定した。Ev(価電子帯端)+1.2eVである。この値が理論的に再現できるように、界面準位の第一原理計算の最適化を施した。このようなやり方で、界面の第一原理計算の技術開発も図っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている原因は、電流検出型電子スピン共鳴UEDMR)分光装置の故障と、コロナ禍における研究設備の稼働率の低下である。 後者は社会的要因なので、ここでは前者について説明する。EDMR分光装置は、市販の電子スピン共鳴(ESR)分光装置を改造して構築している。改造部分は電流検出系で、3~4台の計測機器とオリジナル電気回路の組合せとなっている。ESR装置はドイツ・ブルカー社製のESP300装置・E500装置・E580装置で、筑波大の梅田グループに4台が設置されている。最も旧いESP300は30年以上前の製品で、新しいE500でも10数年前となっている。これらの装置の基幹ユニットである「マイクロ波ブリッジ」(マイクロ波によってスピンの励起と検出を行うユニット)にここ数年で立て続けに故障が発生した。うち1台のブリッジはドイツ本国に送られた結果、修理不能であると判断された。他の2台のブリッジは、対となるコントローラの不調による動作不良と診断された。しかし、このコントローラも残念ながら修理不能と見られる。そこで本年度は、ブリッジの代替コントローラの外注開発を行った(ナショナルインスツルメンツ社のPXI/FPGAハードウェア+ソフトウェアLabVIEWで構築)。 代替コントローラが完成すれば、残ったマイクロ波ブリッジの延命につながる。しかし本質的に、マイクロ波ブリッジそのものを更新しなければならないと見ている。ブリッジの新規購入は1000~1500万円の予算が必要となるので現実的ではない。よって、コントローラだけでなく、ブリッジ本体についても予算の範囲内で「代替機」を考えるべく、コントローラの内部解析と合わせてブリッジの内部解析も行った。代替機をどうやって用意できるのかをマイクロ波装置メーカーも交えて検討した。代替機の用意を次年度(以降)に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ波ブリッジを故障から復帰させればEDMR分光実験が可能になる。再開後のEDMR実験のために、炭化ケイ素の新規TEG(Test Element Group)の製造を分担者の下で進めた。また、ダイヤモンドについてはEDMR分光だけでなく、ESR分光によってもMOS界面欠陥の探索を進める予定である。ESR分光を使えば密度定量が可能となる。そのための特殊な大面積ダイヤモンド基板の手配を分担者の下で進めた。 以上のような装置準備、試料準備を今後の分光実験に有効に生かしていく予定である。 また、第一原理計算によるMOS界面欠陥の研究についても鋭意進めていく。炭化ケイ素のPbCセンターtype2の計算をまずはまとめたい。
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