2021 Fiscal Year Annual Research Report
X線磁気トモグラフィー法を用いた3次元ナノ磁区構造観察による磁性機能の解明
Project/Area Number |
20H00349
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 基寛 関西学院大学, 工学部, 教授 (60443553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 真一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70598599)
小野 輝男 京都大学, 化学研究所, 教授 (90296749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 3次元磁区観察 / スキルミオン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度には、X線磁気トモグラフィー法により初めて観察された、逆ホイスラー合金単結晶試料のスキルミオンひもの3次元形状に関して、シミュレーション計算による詳細な検討を行った。その結果、本試料に関する現実的な物理パラメータを用いて、実験で観察されたスキルミオンひも形状を再現できることを明らかにした。また、ひもの端部や合流地点に存在する磁気的な欠陥構造(創発磁気モノポール)についても、観察結果に対応する構造が再現された。さらに、実験で得られたひもの形状を詳しく解析し、結晶中の欠陥に起因してひもの直径が一様ではないことを見出した。これらの成果をまとめた論文が高インパクトジャーナルに掲載された。また、外部磁場の変化による、スキルミオンひもの構造変化に関する予備的データ(未発表)を得た。
走査型X線磁気トモグラフィー法における、長時間の測定時間や試料の角度点や観察視野が限られるという問題を改善するため、フレネルゾーンプレートを用いた結像型X線磁気トモグラフィー法の開発に着手した。その結果、50μm程度の観察視野について、5倍程度の角度点での測定が可能となった。一方で、検出器由来のノイズが磁気像に重畳しており、この点の改善が課題として残った。
ベクトル磁気トモグラフィーのアルゴリズム開発を行い、模擬データに対してベクトル再構成を行うことに成功した。また、ベクトル再構成アルゴリズムの開発過程で、ノイズ成分を分離し、磁区構造に重畳するアーティファクトやノイズを除去するための再構成アルゴリズムの改良を行った。今後は、ベクトル磁気再構成法を磁気トモグラフィー実測データに適用し、試料内部の磁化ベクトルの3次元可視化を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画のうち、磁気スキルミオンひも立体磁区構造の観察に関して、実験で得られた構造の理論的な裏付けを得、高インパクトジャーナルへの成果公開を行うことができたため。また、外部磁場の変化による、スキルミオンひもの構造変化に関する予備的データを得ている。ベクトル磁気トモグラフィー再構成アルゴリズム開発に関しても模擬データに対してベクトル像の再構成に成功しているため。
一方で、GdFeCo磁性膜における湾曲磁壁のピン留め効果の観測の可視化については、測定時間短縮のために結像型磁気トモグラフィー法の開発を行っている段階である。そのため、ピン留め効果の観測にまでは至っていない。今後の展開のためにも、手法の改良が重要であると判断し、結像型の手法開発を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は今年度までのテーマをさらに発展させ、磁気スキルミオン立体磁区の外場駆動による構造変化の可視化、結像型X線磁気トモグラフィー法の開発を継続、ベクトル磁気トモグラフィーの実試料への適用を行う。 (1) 磁気スキルミオン立体磁区構造の磁場依存性を詳細に観察・検討することを目的とし、試料に電流を流すことによるスキルミオンひもの位置駆動や形状変化の観察を試みる。 (2) 結像型X線磁気トモグラフィーの開発に関して、直接撮像型の高感度X線画像検出器を用いることで測定画像の精度向上と測定時間の短縮を図る。 (3) 模擬データに対して適用できるアルゴリズムを実試料に対して測定した磁気トモグラフィーデータに適用し、試料内部の磁化ベクトル3次元可視化を試みる。
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