2021 Fiscal Year Annual Research Report
廃プラスチックを原料とする新奇水素生成プロセスの創成とそのメカニズム解明
Project/Area Number |
20H00360
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加納 純也 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40271978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 淳司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40210059)
石原 真吾 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40760301)
久志本 築 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10846439)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素 / プラスチック |
Outline of Annual Research Achievements |
廃プラスチックに水酸化カルシウムと水酸化ニッケルを混合し、その混合物を水蒸気雰囲気下で加熱することにより、水素生成できることを見いだした。しかしながら、その反応メカニズムは明確になっていないため、まず、その反応メカニズムを明確にすること、水酸化カルシウムや水酸化ニッケルの代替となる廃棄物を探索し、水素原料がすべて廃棄物である世界に類をみない画期的な水素製造プロセスシステムの創成を目的としている。 令和3年度では、種類の異なるプラスチックの混合物を原料とした場合と廃プラスチックを原料とした場合の水素生成挙動について検討した。ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)を用いた場合には、それぞれ、プラスチック1kgあたり約220gの水素が生成する。それらを1:1で混合して水素を生成したところ、同程度の水素が生成した。PE:PP:PS(ポリスチレン)とPE:PP:PVC(ポリ塩化ビニル)をそれぞれ、1:1:1で混合し、水素生成すると、それぞれ、約60g、約40gとなった。PSとPVCは水素生成反応を阻害することが分かった。 廃プラスチックとしてビニール袋(PE)とペットボトルのキャップ(PP)を原料として使用した。それぞれ、試薬と同程度の水素が生成することを確認し、廃プラスチックから水素生成することに初めて成功した。マヨネーズ、シール、土が付着した汚れたプラスチックを用いて水素生成実験を行ったところ、シールは、水素生成量にほとんど影響を及ぼさなかった。マヨネーズは、水素生成量を増加させる方向に、土は減少させる方向に影響を及ぼすことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、種類の異なるプラスチックの混合物を原料とした場合と廃プラスチックを原料とした場合の水素生成挙動について検討した。ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)を用いた場合には、それぞれ、プラスチック1kgあたり約220gの水素が生成する。それらを1:1で混合して水素を生成したところ、同じく約220gの水素が生成し、PEとPPの混合物は水素生成量にほとんど影響を及ぼさないことがわかる。PE:PP:PS(ポリスチレン)を1:1:1で混合し、水素生成すると、約60gの水素しか生成しなかった。PEとPPからだけでも、少なくとも140g程度の水素は生成するはずであるので、PSを混合すると水素生成反応を阻害する可能性があることが分かった。PE:PP:PVC(ポリ塩化ビニル)を1:1:1で混合した場合においては、水素の生成量がさらに減少し約40gとなった。PVCが水素生成反応を阻害したものと考えられる。 廃プラスチックを用いた水素生成実験では、ビニール袋(PE)とペットボトルのキャップ(PP)を使用した。それぞれ、試薬と同程度の水素が生成することを確認し、廃プラスチックから水素生成することに初めて成功した。マヨネーズ、シール、土が付着した汚れたプラスチックを用いて水素生成実験を行ったところ、シールは、水素生成挙動のほとんど影響を及ぼさなかった。マヨネーズは、水素生成量を増加させる方向に、土は減少させる方向に影響を及ぼすことが分かった。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、複数種類のプラスチックを混合したものからの水素生成と汚れた廃プラスチックからの水素生成実験を実施し、水素を生成することに成功した。 令和4年度は、水素生成反応メカニズムをより明確にするために、プラスチックにあらかじめ混合する水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの役割について検討する。水酸化カルシウムのみを混合する、あるいは水酸化ニッケルのみを混合するなど水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの混合量を変化させることにより、それらが水素生成挙動に及ぼす影響を明確にする。また、ガス生成量、ガス成分、水素生成後の固体残渣をGC、TEM等で詳細に分析することにより、水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの役割を検討する。さらに、プラスチックが熱分解で生成したガスが水素の生成に寄与していると考えられるので、生成ガスとして考えられるメタンと一酸化炭素をキャリアガスとして使用し、それらが水素生成反応に及ぼす影響を検討する。このとき、試料には水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの混合物を使用する。水酸化カルシウムと水酸化ニッケルは水素生成後、炭酸カルシウムとニッケルメタルになることまでは分かっている。水酸化カルシウムは、脱水し、二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムになることが容易に推定できる。一方、水酸化ニッケルは脱水し、酸化ニッケルとなった後に還元されるが、何によって還元されるのかが明確になっていない。そこで、何が還元剤となっているのかを明確にする。
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