2022 Fiscal Year Annual Research Report
廃プラスチックを原料とする新奇水素生成プロセスの創成とそのメカニズム解明
Project/Area Number |
20H00360
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加納 純也 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40271978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 淳司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40210059)
石原 真吾 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40760301)
久志本 築 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10846439)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素 / プラスチック |
Outline of Annual Research Achievements |
廃プラスチックに水酸化カルシウムと水酸化ニッケルを混合し、その混合物を水蒸気雰囲気下で加熱することにより、水素生成できることを見いだした。しかしながら、その反応メカニズムは明確になっていないため、まず、その反応メカニズムを明確にすること、水酸化カルシウムや水酸化ニッケルの代替となる廃棄物を探索し、水素原料がすべて廃棄物である世界に類をみない画期的な水素製造プロセスシステムの創成を目的としている。 令和4年度では、水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの役割について検討を行った。水酸化カルシウムのみ使用した場合は、水素の生成量は若干に留まり、水酸化ニッケルのみを使用した場合は、水酸化カルシウムを使用した場合より多い。水酸化ニッケルと水酸化カルシウムをそれぞれ使用した場合に生成した水素量を足し合わせた量は、水酸化ニッケルと水酸化カルシウムを同時に使用した場合よりも極めて少ない。この原因を探るために、水素を生成した後の残渣のTEM観察を行った。遊星ミルを使用してPE、水酸化カルシウム、水酸化ニッケルを混合し、水素を生成した後の残渣は、炭酸カルシウムの粒子表面にナノ粒子のニッケルが分散している状態になっており、一方、乳鉢で混合した場合には、ニッケルが凝集していることがわかった。ニッケルのナノ粒子が炭酸カルシウム粒子表面に分散していることが水素の生成量を増やしたものと推察される。 反応メカニズムを明確にするために、プラスチックを熱分解したときに生成するガス成分である、水素、一酸化炭素、メタンをキャリアガスとして使用できるように、水素生成装置の配管を改造した。一酸化炭素をキャリアガスとして使用しても配管の継手から漏れないことを確認した。次年度、改造した水素生成装置を使用して、ニッケルメタルの生成メカニズムを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、プラスチックに混合する水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの役割を明確にするために、水酸化カルシウムのみ、水酸化ニッケルのみ、その両方を混合し、水素生成実験を行った。このときの混合には、遊星ボールミルと乳鉢を使用した。水酸化カルシウムを混合するとタールの生成量が減少する。水酸化カルシウムが存在することで、タールの生成が抑制されるのか、あるいは生成したタールが分解するのかの二つが推察される。そこで、プラスチックの代わりにタールを原料として、水素生成実験を行うと、タールからも水素が生成できることがわかった。したがって、一度生成したタールが水と反応して水素が生成する反応が起こることがわかった。 水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの両方を使用した場合の水素の生成量は、水酸化カルシウムのみと水酸化ニッケルのみを使用した場合の水素の生成量を足し合わせたものより遙かに多い。この原因を探るために、水素生成実験後の固体残渣のTEM観察を行った。遊星ボールミルを使用した場合には、炭酸カルシウムの粒子表面上にニッケルのナノ粒子が分散している状態になっていることがわかった。一方、乳鉢で混合した場合は、ニッケル粒子が凝集している。これは、乳鉢の混合操作では、水酸化ニッケルが均一混合されなかったのが原因ではないかと考えられる。混合に乳鉢を使用した場合の水素の生成量は、遊星ボールミルを用いた場合よりも水素の生成量が少なく、水素生成触媒の機能をもつナノ粒子が分散している状態にあることが重要であることがわかった。 プラスチックを熱分解したときに生成するガス成分である、一酸化炭素、メタン、水素をキャリアガスとして水素生成実験ができるように改造を行った。リークテストを行った結果、ガスが漏れることはなかった。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、プラスチックに混合する水酸化カルシウムならびに水酸化ニッケルの役割とプラスチックが熱分解したときに生成するガスを用いるために水素生成実験装置の改造を行った。 令和5年度は、ニッケルメタルの生成メカニズムの検討を行う。水素生成後の固体残渣にはニッケルメタルが存在することが確認されている。混合した水酸化ニッケルは加熱過程において脱水し、酸化ニッケルになるが、何によって還元され、ニッケルメタルになったのかが明確になっていない。プラスチックによって還元されたのか、プラスチックが熱分解したときに生成するガスである一酸化炭素、水素、メタンによって還元されるのかを明確にする。熱分解ガスである一酸化炭素、水素、メタンをそれぞれキャリアガスとして使用し、水酸化ニッケルを水素生成実験と同じ加熱温度である600℃で加熱して、何によって還元されてニッケルになったのかを明確にする。また、ポリプロピレンと水酸化ニッケルあるいはポリエチレンと水酸化ニッケルを遊星ミルで混合し、その混合物を600℃で加熱し、ニッケルメタルが生成されるのかを確認する。 水素源となっている水素の由来を明確にする。水素源となるものとしては、プラスチック中の水素、水酸化カルシウムや水酸化ニッケルの脱水による水、滴下して供給している水があげられる。まずは滴下する水を重水に変更して、水素生成実験を行い、重水素の濃度を分析し、反応機構を明確化する。
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