2021 Fiscal Year Annual Research Report
パターン配向キラル液晶を用いた波面自在制御アクティブ・フラットオプティクスの開発
Project/Area Number |
20H00391
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 雅則 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (50204186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 彰彦 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80304020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 液晶 / 光配向 / コレステリックブルー相 |
Outline of Annual Research Achievements |
キラル液晶の螺旋構造からの反射光の位相は、基板表面の分子の配向方位(螺旋方位とよぶ)に依存し、その螺旋方位を局所光配向技術を用いてパターンニングすることにより、平板であるにもかかわらず、反射光の波面を制御可能な反射型フラットオプティクスが実現できる。しかしながら、パターン分解能や素子面積が不十分なため素子性能の限界と機能の可能性が不透明であり、素子作製時にデザインした光配向パターンが変更することができないため、動的な波面制御が不可能であるという課題がある。そこで本研究では、大面積・高精細の配向パターンを実現し、さらに、キラル液晶の分子配向方位を動的に制御可能な素子を実現することを目的として研究を行った。本年度は、三次元螺旋構造を有するコレステリックブルー相(BP)液晶に着目して、基板面上の配向容易軸方向を連続かつ周期的に変化させたパターン配向素子を用いて、体積グレーティング素子を作製し、円偏光選択性を維持したまま広角の回折を実現した。このパターン配向上のBP液晶は、格子が傾いたスラント構造を形成していることも確認した。さらに、基板間に電界を印加する事により、格子歪を誘起し反射波長の長波長シフトを確認した。また、さらに高い電界を印加することにより、スラント構造から通常の格子配列構造に転移する現象も見出した。以上の結果は、電界によって偏向角並びに偏向波長を制御可能な体積グレーティングの可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、二つの項目からなる。すなわち、(1)パターン光配向技術の高度化による性能限界の探求と応用範囲の拡大と、(2)電界により自在に波面制御が可能なアクティブ・フラットオプティクスの実現である。前年度では、前者に注力し、本提案の根幹技術となっている光配向技術の高度化・最適化をはかり、その結果発現する問題点の洗い出しと解決方法の検討、本研究で目指す波面制御素子の高性能化と性能限界の検討を目的として、(1-1)光配向パターンの高分解能化に関しては、これまで用いてきた液晶プロジェクターを用いた局所パターン偏光描画装置からDMDを用いたものに改良して分解能の向上を図った。その進展をもとに、(1-2)高精細光配向パターン素子の波面制御特性評価および(1-3)微小領域でのパターン化による配向乱れの評価に関しては、フェムト秒レーザーを用いた二光子励起過程をもちいた光異性化反応の活用を当初計画していたが、計画当初より議論を行なっており実際の研究においても実験協力を予定していた米国の研究者が、新型コロナ感染症拡大防止による訪日制限のため研究に参画できず、計画が大幅に遅れた。これに関する実験計画および予算を本年度に繰り越した。(1-4)微細領域配向制御による液晶配向双安定性の検討については、周期的に配向容易軸方向を変化させた局所パターン配向素子において、周期が数μm以下の場合、フラストレート配向状態が発現することを確認した。 (2)の電界によるアクティブ制御に関しては、パターン周期配向基板上のスラントコレステリックブルー相格子の電歪および格子再配列現象を見出し、体積グレーティング内の光偏向の動的制御の可能性を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当初計画に沿って研究を推進することは勿論のこと、フェムト秒レーザーを用いた微細領域への配向パターン書き込み実験に先立って、特に、BP液晶の格子の配列メカニズムのさらなる理解を図るために、外部電界の印加方向の違いによる格子配列挙動の検討を進める。また、微細配向パターン上における液晶の配向状態の直接観測手法の検討を行う。特に、光重合性液晶の表面のSEM観察などの手法を検討する。また、(2)BP液晶への電界印加による格子歪の精密測定を行い、大きな電気光学効果および波面制御性の可能性を探索する。
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