2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of innovative photocatalytic systems for utilizing CO2
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20H00396
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石谷 治 東京工業大学, 理学院, 教授 (50272282)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光反応化学 / 錯体光触媒 / 半導体光触媒 / 二酸化炭素還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
レドックス光増感部の可視吸収領域の拡大を目指し、本来は禁制遷移であるS-T(一重項―三重項)吸収の強度向上を目指した。その結果、S-T吸収の強化された新規錯体Ru(II)およびOs(II)ビストリイミン錯体の合成に成功した。 また、様々な光物理的、電気化学的性質を有するRu(II)およびOs(II)トリスジイミン錯体を合成し、その励起状態および還元剤との光電子移動反応を時間分解分光法とフロー電解法を合わせ用いることで詳細に検討した。その結果、レドックス光増感剤と還元剤との反応による光増感剤の1電子還元体生成の効率を決定する要因を明らかにすることができた。この過程は、光触媒反応の量子収率に決定的な影響を与える。 さらに金属錯体光触媒系に、より高いCO2還元能力を付与するための触媒設計指針を得るため、Ru(II)-Re(I)超分子光触媒によるCO2還元反応の中間体の速度論的、熱力学的性質を、時間分解IR法と時間分解可視吸収測定法、フロー電解法などを駆使することで明らかにすることに成功した 半導体とのハイブリッド光触媒の高機能化を目指し、不導体であるアルミナ表面に金属錯体を安定に固定化する方法を開発し、Ru(II)-Re(I)超分子光触媒、もしくはそのモデル化合物である2種の単核金属錯体を固定した複合固体のCO2光触媒還元能力を検討比較した。その結果、固体に固定されても超分子光触媒はCO2を比較的効率よくCO2を還元するにもかかわらず、単核錯体の混合系は固体表面では光触媒能を発現できないことが明らかになった。超分子光触媒の周辺にレドックス光増感剤を追加で固定化すると、その相乗効果で固体に固定化されたRu(II)-Re(I)超分子光触媒の光触媒安定性が飛躍的に向上することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した4つの目標である、(i)レドックス光増感剤の可視光吸収領域の拡大、ii)レドックス光増感剤の光化学還元による1電子還元種生成の効率決定要因の解明、(iii)錯体触媒上でのCO2還元機構の解明、 (iv)固体表面における超分子光触媒の挙動解明に関しては順調に成果を出すことができた。 (i)に関しては、ほぼ可視光全領域を吸収し、励起寿命が比較的長いOs(II)錯体の合成に成功した。 (ii)に関しては、還元剤の光反応によって生成する錯体の1電子還元種生成効率が、分子形状と価数が同じであるにも関わらず、Os(II)トリスジイミン錯体の場合、対応するRu(II)錯体に比べ大きく低下することを明確にした。その理由が、光電子移動により生成したイオンペアーにおいて(a)Osのより大きな重原子効果、もしくは(b)Os錯体の光酸化力の弱さによるイオン間距離の減少にあると結論付けた。 (iii)に関しては、Ru(II)-Re(I)超分子光触媒によるCO2還元反応の開始反応であるRu光増感部の1電子還元種生成後の反応機構、特に分子内電子移動によって生成するRe触媒部の反応中間体の生成反応速度、およびそこから生じる中間体生成速度およびその熱力学的データを得ることに成功した。 (iv)に関しては、不導体であるアルミナ微粒子表面に金属錯体を安定に固定化する方法を開発した。その手法を用いて、固体表面で錯体光触媒を機能させるためには、光増感錯体と触媒錯体を近傍に設置する必用があり、そのために超分子光触媒(光増感部と触媒部を合わせ持つ多核錯体)が単核錯体の混合系と比べ圧倒的に有利である事を明確に示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきた、可視光をエネルギー、水を還元剤としCO2還元を駆動するZ-スキーム型光電気化学システムの性能向上をさらに目指す。CO2還元を担う色素増感分子光カソードの可視光吸収効率を上げるために、これまで単一で用いていたRu(II)錯体光増感剤に加え、より長波長部に吸収を有するOs(II)錯体を共重合させることで幅広い可視光領域を満遍なく使用可能にする。また、開発した色素増感分子光カソードと、Alポルフィリンを光触媒として用いた分子光アノードを組み合わせることで、分子光触媒の組み合わせで水によるCO2還元を駆動する光触媒システムを世界に先駆けて開発する。このシステムが完成すれば、CO2と水から、可視光をエネルギーとしてCO(もしくはギ酸)と過酸化水素を合成できるシステムとなる。CO2をCOやギ酸ではなく、より還元の進んだ生成物(メタン、メタノール)へと変換する分子触媒の開発を目指す。昨年度までに得られた成果を基にして、1電子還元されても安定なReトリカルボニル錯体を、CO2雰囲気下、電気化学的に多電子還元した際の生成物を詳細に検討する。昨年度から継続的に行ってきた錯体触媒上でのCO2還元機構の解明を更に進める。完全解明を行うために必要な炭酸エステル錯体の1電子還元種からの化学変化を詳細に検討する。
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