2020 Fiscal Year Annual Research Report
Application of curved nanocarbon to active material for secondary batteries
Project/Area Number |
20H00400
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岡田 重人 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (10304841)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 英博 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00262147)
猪石 篤 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (10713448)
喜多條 鮎子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (50446861)
山下 建 (アルブレヒト建) 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (50599561)
燒山 佑美 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60636819)
ステイコフ アレキサンダー 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (80613231)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スマネントリオン / 湾曲型多環芳香族炭化水素類 / ポストリチウムオン電池 / 水系ナトリウムイオン電池 / 全固体電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー問題の解決は世界的に重要な課題であり、高効率で安価な蓄電デバイスの開発は問題解決には不可欠なキーテクノロジーである。わが国で市販化されたリチウムイオン電池は小型のモバイル用途から大型の車載用に向け普及し始めているが、CoやNi等のレアメタルを多用し、その4価高級酸化物の異常原子価状態によって高電圧を発現しているため、経済性と安全性に本質的課題を抱えているため、次世代電池として経済性に優れる水系ナトリウムイオン電池や安全性に優れる全固体電池などが注目されているところである。グラファイトを始めとするカーボン材料は現行リチウムイオン電池の負極として幅広く使われてきたが、インターカレーション反応に伴う過電圧や体積変化に加えて、水系電解液で使用出来ずエッジサイトや欠陥を含む構造-機能相関を明確にすることが難しいなどの課題があった。これに対し、スマネンを始めとしたπ系を持つ湾曲型多環芳香族炭化水素類(PAH)は近年合成が進展している新しい材料群で、本研究はこれをポストリチウムオン電池用活物質に応用展開を図るものである。湾曲PAHは未だに電池材料へと適用されたことがなくその特性は未知であるが構造が明確で湾曲構造特有のイオン貯蔵様式の発現や弱いπ-π相互作用に基づく小さな過電圧が期待されるなどこれまでの有機系電極活物質に新たな分子設計の自由度を加えることが期待できる。本研究課題では有機合成・電池測定・固体電解質の実験科学者と理論科学者が集まることで新規な材料である湾曲PAHの電気化学的な基礎物性とともに次世代電池を中心とした電極特性に関する学理構築を目指し、物性制御の自由度が高い有機系にて既存のリチウムイオン電池のレアメタルフリー化、さらにはメタルフリー化を図るものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コストパフォーマンスを志向した大型二次電池の需要の高まりに伴い、低コストを実現しうるポストリチウムイオン電池として水系ナトリウムイオン電池は魅力的な次世代電池候補の1つであるが、ナトリウムはイオン体積がリチウムの約二倍と大きいため、従来の無機系遷移金属酸化物ホストよりも、低比重でマトリックス中のナトリウム収容サイトの空隙が大きく、官能基修飾による物性制御の自由度が高い有機系材料の中でも湾曲型多環芳香族炭化水素類の中でもスマネントリオンにまず注目した理由は、1)二重結合の開裂反応を利用するため、反応前後で化学種が増えないこと、2)分子主骨格に五員環を導入し曲面π共役構造にすることで、平面π共役構造に比べπ-π相互作用を弱め、イオンの挿入・脱離に伴う過電圧低減が期待できること、3)五員環を有しているため電子受容性が増加し、還元電位の引き上げが期待できることの3点である。今期は既存の1 M NaPF6 EC/DMC非水系電解液よりも安全・安価・高イオン伝導な17 mol/kg NaClO4 高濃度水系ナトリウムイオン電解液中においてスマネントリオンの可逆作動を実電池セルにて世界で初めて確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
古くから水溶液系電解液は不燃性で安価なため、鉛電池やニッカド電池等に使われてきたが、水の電位窓が1.2Vと狭いため、リチウムイオン電池等の3V系高電圧電池には使えなかった。ところが近年水溶液系電解液内から自由水を排除することで、水系ながら3Vの放電電圧を示す系が報告されるに至り、この状況が一変している。しかし、報告されている濃厚水系リチウムイオン電池には高価なイミド塩をハイドレートメルト(常温溶融水和物)状態に至るまで多量に溶解させているため、むしろ従来の非水系電解液よりむしろ高価になってしまううらみがあった。今後は今回室温にて可逆動作確認できた安価な濃厚ナトリウムイオン電池のさらなる高電圧化、大容量化を図ると共に、新規な水系マグネシウムイオン電池や全固体電池への展開を目指す。
|
Research Products
(9 results)