2020 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of a Structural and/or Functional Model of New Light-harvesting System Using Artificial Hemoprotein Assembly
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20H00403
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 高史 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20222226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野田 晃 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (60366424)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヘムタンパク質 / 光捕集系 / 亜鉛ポルフィリノイド / エネルギー移動 / 人工光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、植物の光合成に関する作用機序が次々と明らかとなり、光合成の活性中心を模倣・応用する研究も盛んに実施されている。そのモデル研究の多くは低分子の色素を合成化学的・超分子化学的に集積させるアプローチである。本研究では、光合成初期過程の光捕集アンテナ組織に学び、これまで我々が精力的に実施しているヘムタンパク質人工集積化手法を駆使して、多数の色素をタンパク質マトリクス内に環状に配置した人工光捕集系の構築を実施している。これまでに、HTHP (Hexameric tyrosine-coordinated heme protein)と呼ばれているヘムタンパク質6量体(天然の機能は不明)を核として、六量体の一つ一つのヘムポケットにチトクロムb562(電子移動ヘムタンパク質)のオリゴマーを放射状に伸ばすStar-shaped 集合体の形成を行った。チトクロムb562は、単量体の小さなヘムタンパク質であるが、このチトクロムb562の表面にヘムを共有結合を介して結合させた。一方で天然のヘムを酸処理によってヘムポケットから除去することにより、チトクロムb562は、ヘム分子をタンパク質表面に有するアポタンパク質になり、その結果、分子間でヘムーヘムポケット相互作用が生じ、タンパク質のオリゴマー体が得られる。この挙動を利用して、別途アポ体に調製したHTHPから放射状にチトクロムb562を集合させることを試みた。得られた集合体は、サイズ排除グロ的グラフィー、動的光散乱、電気泳動などの手法を用いることにより、その集合化の状態を考察し、星状に集合化したヘムタンパク質複合体であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子伝達ヘムタンパク質であるチトクロムb562のタンパク質表面の80番目のアスパラギンをシステインに置換したN80C変異体を調製し、マレイミド基を側鎖末端に有するヘムを添加することにより、ヘムが共有結合で繋がったチトクロムb562修飾体を得た。次に天然のヘムを酸処理により除去することにより、直線状のチトクロムb562オリゴマーを得た。次に、六量体チロシン配位ヘムタンパク質のアポ型(apoHTHP)にこのオリゴマーを添加することにより、星型構造の集合体を得た。チトクロムb562のタンパク質表面に結合したヘム部位のapoHTHPへの取り込みは、反応温度を45℃程度に上げることで加速された。新しい大きな集合体構造の形成は、サイズ排除クロマトグラフィーによって確認された。集合体中のヘム含有ユニットの比率をUV-Vis分光法で分析し(ヘムのSoret帯と280 nm のタンパク質領域の吸収の比から)、さらに電気泳動によるSDS PAGEから推定したタンパク質ユニット複合体は、星型構造の形成を示唆した。これはさらに動的光散乱で得られた流体力学的直径のデータによって支持された。これらのデーターか推定される妥当な複合体は、たとえば、apoHTHPに対して、4つのチトクロムb562の線状4量体が結合していると考えられる。このように、2種類のヘムタンパク質を用いて、色素を補因子に含むタンパク質集合体を構築することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き6量体ヘムタンパク質(Hexameric Tyrosine-coordinated Heme: HTHP)を用いた光捕集系の構築をめざす。さらに、チトクロムb562やGFP(Green Fluorescence Protein)等のタンパク質にも新たに着手し、新しい人工光捕集系の固創製の基盤を築く。具体的には次の2項目を中心に研究を展開する。 これまで、HTHPをコアにして、チトクロムb562の直線状超分子集合体をヘム―ヘムポケット相互作用で伸ばし、Star-shaped 型のヘムタンパク質集合体を初めて構築した。この知見を活かし、今年度も引き続きこのようなヘムタンパク質集合体の構築を試み、さらに当初はヘム(鉄ポルフィリン)を補因子として用いているが、最終的には亜鉛ポルフィリンに置換し、光捕集系(アンテナ)への誘導をめざす。具体的には、蛍光スペクトルや蛍光寿命・偏光などの分光学的手法を駆使して、タンパク質集合体内でのエネルギー移動の挙動を評価する。それとともに、集合体構造をAFM等で見積もり、集合体の構造の解析等もあわせて実施する。 次に、HTHPタンパク質への金属錯体の修飾にも着手する。HTHPは円型ディスク状の構造をしているため、その中心に、金属錯体を化学修飾し、周囲の亜鉛ポルフィリンから光励起によって、中心の金属錯体がスムーズに還元する系の構築を図る。具体的には、まず錯体の修飾を行う部位を有するHTHP変異体の発現を行う。一方、修飾する金属錯体を別途合成し、両者を共有結合によって複合化し、タンパク質の同定と構造解析を実施する。さらに、実際に光照射を行い、金属錯体の還元反応を各種分光学測定を用いて追跡する。
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