2020 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Novel N-Confused Metallo-porphyrinoid System
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20H00406
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古田 弘幸 九州大学, 工学研究院, 教授 (40244157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 真敏 九州大学, 工学研究院, 助教 (60706951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポルフィリン異性体 / 触媒 / 近赤外光 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究代表者が独自に展開している「N-混乱ポルフィリン(NCP)」と呼ぶ反転ピロール環を含有する異種ポルフィリンの化学を基盤として、金属配位可能な多様なN-混乱ポルフィリノイド化合物の基本光・電子・磁気物性などを包括的に検討することで、多機能性(多電子授受能、触媒能、光熱変換能など)の発現を目指した分子材料の開発を目的としている。 研究計画初年度は、ポルフィリン骨格の構造変異によって誘起されるNCPの近赤外光吸収特性を活用し、各種金属錯体を光感受材料として、無機半導体光触媒表面へ修飾させることで、全光(紫外-可視-近赤外)照射によって、水の完全分解を達成した。また、環縮小ポルフィリンであるコロールの異種誘導体としてN-混乱ノロールは、酸化還元活性な配位子として、コバルトイオンの配位により、レドックスノンイノセンスな金属錯体を与える。この錯体は、電気化学的なプロトン還元により、低電位で駆動する水素発生触媒として機能することを見出した。 またNCP分子骨格を拡張することで得られるN-混乱ヘキサフィリンは、特異な窒素/炭素複合配位場を提供し、パラジウムおよび白金イオンとの配位により、波長1500nmを超える近赤外光(NIR-III)吸収特性を示す。さらに色素分子では極めて例の無い、NIR-III発光および光音響信号の観測に成功し、次世代バイオイメージングに資する色素の基盤化合物となりうること見出した。同時に以上の金属イオンに依存した励起化学種のダイナミクスを制御するアプローチで、光熱変換色素材料へと展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、特異な有機金属的配位環境を提供するN-混乱ポルフィリンを活用する種々の機能性色素・触媒材料の創製を目指しており、計画初年度において、研究目標としてる金属NCPを修飾した光触媒系やNIR-II/III光吸収・発光・光音響応答する基盤色素分子のプラットフォームとなりうる化合物群を開発し、大きな進展が見られた。特にこれらの巨大π共役金属錯体を基盤とする水溶性ナノ粒子材料を、生物個体のin vivoイメージングを指向した応用展開に向けた重要な知見がいくつも得られたと考える。また、別の分子設計アプローチによって、金属N-フューズポルフィリンやN-混乱ポルフィリン二量体等の近赤外光機能性色素の合成方法論も確立し、今後様々な用途へと展開が期待できる。 従って、現在までの進捗状況は、当初計画以上に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の初年度において、NCP修飾光触媒による水の完全分解や、電気化学的な水素発生等、再生可能エネルギー化学に貢献する重要な金属錯体色素の合成を達成しており、次年度では、さらなる色素骨格の最適化により、そのZ-スキーム型反応の機構解明および鍵となる構造因子を明確にすることで、高効率光触媒系の構築を目指す。また近赤外光音響造影剤として用いたヘキサフィリン系色素骨格のNIR-II領域の吸光係数の増強を目指した、軌道非対称なπ拡張色素類のモジューラ合成を目指す。これにより、より深部の高解像イメージングの実現および光熱変換治療といったセラノティクス応用へと展開できる余地があると考える。また更に巨大拡張ポルフィリン誘導体を合成し、特異な捻じれ配位環境によって誘起される常磁性金属種のと磁気解析を実施し、スイッチャブルな磁気材料へと展開する予定である。
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