2022 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Novel N-Confused Metallo-porphyrinoid System
Project/Area Number |
20H00406
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
古田 弘幸 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (40244157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 真敏 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (60706951)
清水 宗治 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70431492)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポルフィリン異性体 / 光触媒 / 近赤外光 / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究代表者が独自に展開している「N-混乱ポルフィリン(NCP)」と呼ぶ反転ピロール環をポルフィリン環骨格に有する、ポルフィリン異性体化学を基盤として、金属配位可能な多様なN-混乱ポルフィリノイド化合物の基本物性、光・電子・磁気特性などを包括的に検討することで、多機能性(多電子授受能、触媒能、光熱変換能など)の発現を目指した分子材料の開発を目的としている。 3年目となる本年度は、無機半導体(KTaO3)に各種のNCP金属錯体を担持し、水の光分解触媒能の定量的評価を行った。その結果、NCPコバルト錯体が最も高い活性を示すことが明らかとなった。電気化学、計算化学による検討から、この錯体のLUMOレベルが光分解システム(Pt/M-NCP/KTa(Zr)O3)に最適であることも明らかになった。また、このコバルト錯体の二量体については吸収波長が900 nmを越え、触媒脳の向上が期待されることから、詳細な電気化学的検討を行ったところ、配位子側での酸化還元が進行し、マルチレドックスリザーバーとして機能することを見出した。一方、NIR-I領域色素の展開として、ブタジイン架橋BODIPY二量体を合成し、結合軸周りの回転運動に起因する吸収・発光挙動の変化が溶媒粘度に依存することを見出し、近赤外粘度センサとしての応用可能性が示唆された。 また、N-混乱ヘキサフィリンの長軸方向にエチニルフェノール基を導入し、長波長吸収帯の伸長及び吸収強度の増強を試みた。フッ化物アニオンの添加により、1100 nm付近の吸収帯がフリーベース体では1400 nm、銅錯体では1600 nm付近までシフトすることが観測され、脱プロトン化によるジアニオンの生成が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、特異な金属配位環境を提供するN-混乱ポルフィリン(NCP)およびその類縁体を活用し、種々の機能性色素・触媒材料の創製を目指しており、3年目となる本年度においては、コバルトNCP錯体の水光分解における高い触媒評活性を見出したことで、無機半導体との協同効果により、高効率な光触媒水分解系構築の土台となる重要な知見が得られたと考えている。 またバイオ応用を指向したNIR色素の開発に関しても、新たな連結二量体や周辺修飾体の合成に成功しており、着実に成果が得られている。混乱ポルフィリノイドを基体とする、豊富なレドックス活性を示す配位子群は新たなスィッチング材料としても有望であり、おおむね順調に研究が計画通り進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、これまでに開発した種々のNIR色素の中から適切なものを取捨選択し、セラノティクス応用を指向したNIR-II光音響イメージング造影剤への展開、Z-スキーム型反応を利用する高効率な水の光分解系の構築、RNAグアニン4重鎖(Gーカルテット)と結合する色素を用いた医療応用に加えて、NCP配位子の基本特性である高酸化状態金属の安定化要因について精査する予定である。特に、Gーカルテットに関する研究はRNAの専門家である井川教授(富山大学)を研究分担者に加えることで、相互作用に関するより分子論的な検討が可能になると期待している。
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