2020 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋機能の分子基盤解明と健康寿命延伸に資する機能性食品の創出
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20H00408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50187259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / エクソソーム / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)iPS骨格筋細胞を用いた実験系の確立 京都大学iPS細胞研究所の櫻井英俊准教授らが開発した、薬剤誘導的にMyoDを発現させ骨格筋へと分化する細胞を用い、解析を進めた。シャーレ上で筋管細胞様に分化し、分化前と分化5日後の細胞内のマーカータンパク質の発現をWB法にて解析した。iPS細胞マーカーであるSox2,Oct-4A、Nanogはいずれも分化前に発現が確認され、分化5日では消失した。一方骨格筋マーカーであるMyoD1,Myogenin、Caveolin-3は分化5日でのみ発現が確認された。以上の結果より、骨格筋細胞への良好な分化が確認された。 (2)iPS細胞由来骨格筋細胞からエクソソームの回収実験 分化誘導5-6日目のiPS由来骨格筋細胞の培地を回収後、超遠心法にてエクソソーム画分を単離した。電子顕微鏡により直径100nm以下のエクソソーム粒子を確認した。エクソソーム画分にAlix、CD81,Caveolin-3などをWB法にて確認した。 (3)C2C12筋管細胞からエクソソームの回収実験 同様の方法でマウスC2C12細胞培養液よりエクソソームを超遠心法にて回収し、電子顕微鏡観察を行った。直径100nm以下の粒子状のエクソソームが確認された。また各種エクソソームマーカータンパク質の存在をWB法にて確認した。 (4)筋萎縮によるエクソソーム分泌への影響解析 筋萎縮に伴いエクソソーム分泌に変化が生じるかについてC2C12筋管細胞をデキサメサゾン処理を行い、萎縮を誘発し、エクソソームを回収した。筋萎縮のマーカーとしてAtrogin-1発現を遺伝子レベル、タンパク質レベルで測定し、増加することを確認した。デキサメサゾン存在下でエクソソーム上のタンパク質で存在量が上昇するタンパク質を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞から骨格筋細胞への分化が良好に再現良く行え、また分化マーカーの確認もでき、実験系の確立が終了した。今後はヒトiPS細胞由来骨格筋細胞を用いて種々の実験が可能となった。同時に培養骨格筋から信頼性の高いエクソソーム分画の単離に成功した。各種エクソソーム粒子のマーカータンパク質が検出された。さらに電子顕微鏡観察により粒子状のエクソソームを検出することにも成功した。今後は各種刺激に応答してエクソソーム分泌、その内容物が変化することを追跡する研究に発展させることが可能となった。一方、筋萎縮刺激をデキサメサゾン投与により行ったところ、ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞では萎縮応答が弱かった。マウスC2C12筋管細胞では応答が認められ、これら2種類の細胞を比較検討して、筋萎縮研究をヒトiPS細胞由来骨格筋細胞で行える条件を詰めていく必要がある。すでに萎縮させたC2C12筋管細胞で見出された結果が、ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞で再現できるのかについて検証を重ねていく。筋萎縮時のエクソソームを介した情報伝達の変化を追跡する研究を展開する。また電気刺激等を行い、運動負荷を再現した系での解析法の樹立、解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ヒトiPS由来骨格筋細胞を用いた実験系の確立 ヒト骨格筋細胞を用い、マイオカイン分泌、細胞内遺伝子発現を解析し、正常骨格筋細胞のモデル細胞としての信頼性を確認する作業をさらに進める。 (2)iPS細胞由来骨格筋細胞とマウス由来C2C12筋管細胞との比較検討 これまでに有用な骨格筋培養細胞として用いられてきたC2C12細胞とiPS由来骨格筋細胞の応答性の違いについて解析を進める。筋萎縮を誘導するデキサメサゾンへの応答性について解析を行う。さらにそれぞれから分泌されるエクソソームについてその粒子径、粒子含有タンパク質の変動をWB法にて解析する。また筋萎縮により生じる変化の分子機構を明らかにする。 (3)培養筋管細胞への電気刺激によるマイオカイン分泌、遺伝子発現変動の解析 運動を模倣する手法として電気刺激を用いる。電気刺激の適切な電圧、刺激時間について条件検討を行う。具体的には運動刺激により一過的に発現が上昇するPGC-1αなどの上昇を指標に細胞が刺激に応答したことを確認する。並行してマウスをトレッドミルを用いて運動負荷を与え、骨格筋内の遺伝子発現変動、血液中のマイオカイン濃度変化を追跡する。in vivo実験結果とin vitro実験結果の同調性を解析していく。さらに培養筋管細胞の培養条件として、細胞外マトリクス成分の寄与について、各種マトリクス成分をコーティングしたシャーレ上で細胞を培養することにより、in vivo条件に近い培養条件を整えていく作業を行う。 (4)老化骨格筋細胞解析系の樹立 ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞にX線照射を行い、老化モデル細胞の樹立を行う。DNA損傷のマーカー遺伝子発現を解析することにより、老化の指標とする。さらに細胞内で種々の老化現象が進行しているかについて解析を進める。
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Research Products
(14 results)