2021 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋機能の分子基盤解明と健康寿命延伸に資する機能性食品の創出
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20H00408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (50187259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / 老化 / 筋萎縮 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)iPS骨格筋細胞を用いた実験系の確立 京都大学iPS細胞研究所の櫻井英俊准教授らが開発した、薬剤誘導的にMyoDを発現させ骨格筋へと分化する細胞を用い、解析を進めた。2種類の細胞株を用いた比較検討を行い、種々の条件で応答性の良い株を用いることの有用性を確認した。各種遺伝子発現も正常組織と同等のレベルであることを確認した。 (2)iPS細胞由来骨格筋細胞とマウス由来C2C12筋管細胞との比較検討 これまでに有用な骨格筋培養細胞として用いられてきたC2C12細胞とiPS由来骨格筋細胞の応答性の違いについて解析を進めた。筋萎縮を誘導するデキサメサゾンへの応答性について解析を行った結果、C2C12細胞に比較してiPS由来骨格筋細胞は応答が弱いことが判明した。複数の刺激に対してそれぞれの細胞で応答性の違いが確認された。 (3)培養筋管細胞への電気刺激によるマイオカイン分泌、遺伝子発現変動の解析 運動を模倣する手法として電気刺激を用いる。電気刺激の適切な電圧、刺激時間について条件検討を行い一定の条件を確立した。 (4)老化骨格筋細胞解析系の樹立 ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞にX線照射を行い、老化モデル細胞の樹立を行った。DNA損傷のマーカー遺伝子発現を解析することにより、老化の指標とした。老化細胞から分泌される各種SASPについて、それらの遺伝子発現が亢進すかについて解析を行った。複数の因子について発現上昇が確認された。また培地中への分泌はELISA法にて確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞由来の分化骨格筋細胞と、マウス筋管細胞C2C12の種々の刺激に対する応答性の差異が、これまでの実験から次第にに明らかにされてきた。その結果、どのような条件で生理的応答を解析するかについての指針が立てられる。ヒトiPS由来骨格筋細胞はすべての解析に応用可能ではなく、応答性が優れた生理的刺激に対する解析に特化して、利用を進めていくことが必要であると考えている。 ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞の電気刺激についても、その実験条件が設定され、今後の解析が順調に進展することが期待される。さらにゲル上に培養して伸張・収縮刺激と同時に電気刺激を負荷する実験系の確立が待たれる。 ヒトiPS細胞由来骨格筋から老化細胞を作成してその機能を解析する研究については、X線照射、薬物処理のいずれの手法を選択するかが今後の課題と言える。またiPS細胞由来の培養骨格筋細胞を長期間培養する実験系の構築が必要となる。そのことにより、老化の進行、悪化を追跡できる実験系の確立が可能となる。さらにSASP分泌に関して、老化と並行して分泌上昇が認められる因子を同定し、それらについてさらに詳細な解析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
京都大学ヒトiPS細胞研究所が開発した、薬剤誘導的にMyoDを発現させ骨格筋へと分化する細胞を用い、解析を進める。マイオカイン分泌、細胞内遺伝子発現を解析し、正常骨格筋細胞のモデル細胞としての信頼性を確認する作業をさらに進める。 これまでに有用な骨格筋培養細胞として用いられてきたC2C12細胞とiPS由来骨格筋細胞の応答性の違いについて解析を進める。 運動を模倣する手法として電気刺激を用いる。骨格筋内の遺伝子発現変動、血液中のマイオカイン濃度変化を追跡する。in vivo実験結果とin vitro実験結果の同調性を解析していく。さらに培養筋管細胞の培養条件として、細胞外マトリクス成分の寄与が大きいことをすでに認めており、そのシグナル伝達様式について解析を進める。 ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞にX線照射を行い、老化モデル細胞の樹立を行う。DNA損傷のマーカー遺伝子発現を解析することにより、老化の指標とする。同時に老化指標となる複数のSASPについて、その遺伝子発現変動、分泌変化を追跡する。並行して、これらの分子を指標として抗老化活性を測定することが可能かについて検証試験を試みる。
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Research Products
(11 results)