2023 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋機能の分子基盤解明と健康寿命延伸に資する機能性食品の創出
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20H00408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (50187259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨格筋 / ヒトiPS細胞 / 老化 / SASP / 機能性食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)老化骨格筋細胞の樹立と老化促進機構の解析 組織の老化の引き金には、散在する老化細胞が分泌する炎症を惹起するサイトカイン等を含むSASPの重要性が指摘されている。ヒト胎児肺由来の繊維芽細胞IMR-90を用いて、SASP分泌を高める条件検討を行った。X線照射またはDNA障害薬物処理を施し、SASP因子マーカーの追跡を行った。同時に、老化マーカーとして用いられる酸性βガラクトシダーゼ染色を行い、細胞老化の進行を確認した。複数のSASP因子の数倍から数十倍の発現上昇が認められ、これら培地を回収し、ヒトiPS細胞由来の骨格筋細胞の培養を行った。複数の遺伝子の発現上昇、減少が認められ、さらにヒト骨格筋細胞老化の分子機序について研究を進めていく。 (2)骨格筋に特異的に発現する機能未知の因子Xに関する研究 因子Xは、骨格筋の中でも速筋に特異的に発現している、膜貫通(結合)領域を有する比較的小分子量タンパク質である。本タンパク質の骨格筋における機能を明らかにする目的で、KOマウスの開発に着手した。獲得したホモマウスにおいては、体重その他に大きな変化は認められなかった。しかし、体重に占める複数の速筋重量は、ホモマウスで有意に減少していた。また、筋力を測定すると筋量低下に伴い、減少が確認された。また、血中のクレアチンキナーゼ濃度を測定したところ、KOマウスで有意な上昇が確認された。さらに本タンパク質の骨格筋内での機能解析を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋から分泌されるエクソソームの解析、筋タンパク質分解を促すマイオスタチン、GDF11の機能解析、骨格筋老化を促すSASPについての基礎知見、さらに新規因子Xの機能解析が順調に進行しつつある。マイオスタチン、GDF11については、これらの因子の機能をマスクする成分を食品から見出すことにより、機能性食品創出へとつながることが大いに期待される。また、複数の因子について基礎知見が積み重なりつつあり、骨格筋機能を改善する新たな方向性が見出されることが予想される。全般的に見て、現在までの進捗状況はおおむね良好と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)老化培養細胞の樹立と機能解析 ヒトiPS細胞由来骨格筋細胞をSASP刺激することにより老化マーカー因子の増加が確認され、細胞内シグナル伝達経路の活性化が認められた。老化進行に伴い、どのようなシグナルがクラスターとして増減するかについてRNA-Seq解析を駆使して解析を進める。老化の進行を抑制する標的を見出すことにより、機能性食品成分の探索方法が明確化することが期待される。 (2)速筋に特異的に発現する因子Xの機能解析 すでに開発した因子X欠損マウスの解析を進める。さらに因子Xにタグを添加した発現タンパク質を用いて結合タンパク質の同定を行う。この結果により、欠損時に筋委縮が生じるメカニズムの解明を行う。 (3)マイオカインのマイオスタチン、GDF11の筋萎縮作用を標的にした食品成分探索 マイオカインは筋量制御に重要な役割を演じており、この作用を抑制する食品成分には高齢者の筋量を維持する機能が期待される。Smad結合モチーフを複数個連結したレポーター遺伝子を用いたルシフェラーゼアッセイ系を構築しており、この系を用いて約500種類の食品成分について、マイオスタチン作用を減弱させる成分の探索を進める。さらにその作用様式についての解析を行う。
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Research Products
(14 results)