2021 Fiscal Year Annual Research Report
二枚貝の脳ホルモンが制御する性分化と性成熟ーその分子機構と種苗生産への展開ー
Project/Area Number |
20H00426
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾定 誠 東北大学, 農学研究科, 教授 (30177208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐竹 炎 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主幹研究員 (20280688)
原口 省吾 昭和大学, 医学部, 講師 (20592132)
長澤 一衛 東北大学, 農学研究科, 助教 (50794236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 二枚貝 / 性分化 / 生殖細胞 / GnRH / ステロイドホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
1)噴火湾ホタテガイの生殖周期にともなう雌雄の生殖細胞の発達と退縮観察から、斃死の多い年級群の春季産卵後の異常な夏季の再成熟を見出し、産卵後の休止期の生殖小胞内皮のvasa陽性細胞が常在性の生殖幹細胞であると示唆された。 2)春季の成熟期に雌雄判別しておいたホタテガイに、2種類のpyGnRH(pyGnRH11aaPro-NH2とpyGnRH12aaGly-OH)を低侵襲性の方法で投与し、0、1、2ヶ月経過個体から解析に供する組織を採取した。並行して、卵巣、精巣組織に対する2種類のpyGnRH添加とそれらの相互作用解析のための共添加培養を行い、同様に組織を採取した。生殖細胞発達と性特異的遺伝子及びステロイドホルモン生合成関連酵素遺伝子発現への影響の解析を始める。時間分解蛍光免疫測定法によって、雄の頭部・足部神経節でpyGnRH11aaPro-NH2が、雌ではpyGnRH12aaGly-OHが優勢であったことから、頭部・足部神経節のGnRH分子種が雌雄性に関わっていることが推測された。 3)脊椎動物型エストロゲンE2に対してヒトERα-ERE-Luc HEK293細胞のみが用量依存的に応答し、キメラER- ERE-Luc HEK293細胞は応答しなかった。一方、ホタテガイ卵巣、精巣から抽出したステロイド画分に対しては、キメラER- ERE-Luc HEK293細胞が応答したことから、脊椎動物型とは異なるホタテガイ生殖巣のエストロゲン様物質の存在が示唆された。 4)データベースに登録されている434個のGPCR(Gタンパク共役型受容体)候補遺伝子から機械学習による予測プログラムを用いてpyGnRH12aaGly-OHの受容体候補として11個の候補受容体遺伝子が選ばれ、そのうちの3遺伝子をHEK293MSR細胞に発現させたが、応答は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに、生殖細胞マーカー、雌特異的遺伝子foxl2に加えfem1、雄特異的遺伝子dmrt2に加えsox-hを獲得しており、それらの特異性評価を早急に終わらせ、未分化から分化初期にあたる生殖細胞の雌雄の性表現型の解析に移る。 投与実験と生殖巣培養実験を完了させ、採取した組織サンプルの細胞形態、遺伝子発現に加えて、卵巣、精巣組織に対する2種類のpyGnRHの添加培養によるトランスクリプトームの発現差解析も並行して進めており、新たな性分化関連遺伝子の探索と機能解析が期待できる。 すでに、共同研究者によるよるステロイドの分離・画分の分取が進められており、キメラER- ERE-Luc HEK293細胞を駆使して、高活性の分子種の質量分析を進めている。 残る8つのGPCR遺伝子を組み込んだ発現ベクターの調整を進めており、確認次第、順次HEK293MSR細胞に発現させて、2種類のpyGnRHへの応答特性から、第2のpyGnRH受容体を特定を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
産卵後の退縮期から分化初期の間の生殖小胞内皮を構成するvasa陽性を示した生殖細胞が、どのタイミングで性分化をしているのかを、生殖細胞マーカー遺伝子vasa、雌特異的遺伝子foxl2とfem1、雄特異的遺伝子dmrt2とsox-hを用いて明らかにする。また組織培養系への2種類のpyGnRH添加による性分化誘導の可能性を検討する。 2種類のpyGnRHの生殖細胞発達及び性とステロイドホルモン生合成への影響を、組織学的観察、性特異的遺伝子及びステロイドホルモン生合成関連酵素遺伝子及びトランスクリプトーム解析で得られた遺伝子の転写量をもとに詳細に解析する。 キメラER- ERE-Luc HEK293細胞によるホタテガイ卵巣・精巣から抽出したステロイド画分からの新規エストロゲン様分子の絞り込みを、逆相HLPCにる繰り返し分画とLC-MS/MSによる質量解析によって進める。 GPCR遺伝子の発現ベクターを構築し、トランスフェクトしたHEK293MSR細胞のpyGnRH12aaGly-OHに対する応答性を、細胞内情報伝達を担うセカンドメッセンジャーCa2+とcAMPの両面から検討し、新規受容体の特定と、既知のpyGnRHRを介した2種類のpyGnRHの関係性を解析する。
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