2021 Fiscal Year Annual Research Report
Generation of a high-resolution genome map using haploid and hybrid organisms and its application to genetic analysis
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20H00429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒河内 寛之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (00609000)
稲野 俊直 近畿大学, 水産研究所, 准教授 (50604609)
川村 猛 東京大学, アイソトープ総合センター, 准教授 (70306835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 連鎖地図 / SNPタイピング / ハプロイド / ハイブリッド個体 / 雑種個体 / 半数体 / ゲノム解析 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
分担者らの協力のもとに作出したクロマグロとスマの雑種個体の多型タイピングを行い、スマ、クロマグロの連鎖地図を作成した。さらに分担者から、ブリとヒラマサの雑種、ニホンウナギとオオウナギの雑種、アユの半数体、シイタケの単核相細胞、マツタケの単核相細胞の提供を受け、それらからのゲノムの抽出と、全ゲノムシーケンシングによる多型タイピングを進めており、一部完了した。またハンガリーの共同研究者からチョウザメとヘラチョウザメの雑種の提供を受けて実験を進めている。 ナマズ、アユの半数体、雌性発生胚の作出を実施した。その結果、ナマズは半数体、雌性発生ともに受精率が極めて低かったためサンプルを得ることができなかった。アユは多数の半数体卵のサンプルを得ることができた。ニホンウナギとオオウナギの雑種は極めて高い受精率、ふ化率を示し、雑種胚及び雑種仔魚のサンプルを得ることができた。 植物に関して2020年度は新型コロナの影響があったが、2021年度は下記の実験を開始でき、以下の研究結果を獲得した。シイタケとマツタケの単核相細胞(一次菌糸または胞子)を準備し、連鎖解析を開始した結果、ドラフトゲノムの質を著しく改善できた。アカマツとクロマツの交雑個体(アイグロマツ)の作出を開始し、現時点で確定的ではないが受粉が成功していると期待できる結果を得ている。 それぞれの生物のエクソソーム解析を推進するための予備的な検討を行った。それぞれの種でタンパク質配列のデータベースが整備されていることが解析には必要であるため、ゲノム配列からそれらのデータベースの構築を試みている。 イトヨについてハプロイドゲノムタイピングのバリエーションとして個々の精子のシングルセルゲノム解読によるタイピングを検討し、連鎖地図を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロマグロ、スマのハイブリッド個体のタイピングにより、双方の高密度連鎖地図を構築することができた。 海産魚ではブリ(Seriola quinqueradiata)雌とヒラマサ(Seriola lalandi)雄の雑種胚、淡水魚ではアユの半数体胚、ニホンウナギ雌とオオウナギ雄の雑種胚及び仔魚を得ることができた。 L. edodesでは100サンプル程度の一次菌糸を培養しDNAを入手した。しかし、一部のサンプルのDNA量は今後の解析には不十分な可能性があったため、DNA量の増加を検討し始めた。さらに、L. edodesの胞子を使用し10xGenomicsでシングルセル解析を実施し連鎖解析を追加したところ、PacBio RSIIでアセンブルのみの場合と比較し、N50の値は4,184,853bpと10倍以上の長さになり、最大コンティグ長も9,901,526bpと7倍以上に改善された。また、本研究で利用した国産L. edodesと既に報告された外国産L. edodesの全ゲノム比較から複数の構造変化も確認された。T. matsutakeの胞子をL. edodesと同様の方法で処理してデータを取得したところ、T. matsutakeの塩基配列は全体の1割未満となり、深刻なコンタミがあり、人工培養系で収穫できないサンプルの調整方法や評価方法の検討を余儀なくされた。2種のマツのハイブリッド個体の作出に向け、2021年4月~5月にP. densifloraの雌花にP. thunbergiiの花粉を受粉、または、P. thunbergiiの雌花にP. densifloraの花粉を受粉させた。一部の球果は2022年1月時点で成長が進んでいたため、受粉成功の可能性があった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ゲノム解析試料の入手:様々な組み合わせの雑種の形成を試みる一方、魚介類では安定かつ容易に良い質の卵が得られることに重きを置いて、そのような種の選定を行う。黒河内は天然の雑種を採取する。L. edodesの一次菌糸由来のDNA量の増幅方法を検討する。新たに完成したの染色体地図を用いて、系統の異なるシイタケの比較ゲノム解析を行う。人工培養困難な子実体からのきれいな胞子の採取方法と評価方法を検討する。樹木のハイブリッド個体を作成する。また、花粉からの解析の可能性についても検討を始める。2.超高密度連鎖地図の作成:得られた試料を低カバレッジで全ゲノム解読をおこなう。ハンガリーの研究者と共同で開始した、ロシアチョウザメ、ヘラチョウザメの雑種を用いた連鎖解析を行う。また、スマとクロマグロ、ブリとカンパチの雑種についても研究を進展させる。3.高分子DNAの調整と長鎖シーケンシング:申請者らが高分子BACライブラリー構築のために確立した高分子DNA調製法を活用してロングリードの一連の手法を確立する。4.高精度ゲノムシーケンスの構築:1から3の試みを組み合わせて、上記生物種について高精度ゲノムシーケンスを構築する。5.重要遺伝子の連鎖解析やGWAS:養殖魚の高成長、耐病性、温度等の環境耐性の形質の責任遺伝子を明確にする。アコヤガイの耐病性に関する遺伝子の特定を目指す。また川村はアコヤガイや魚類において各形質に関するエキソーム中のペプチドの分析を質量分析計によって解析する。6.比較ゲノム解析などへの応用:近縁種の遺伝子地図を作成し形質の差をゲノムレベルで検討する。菌、樹木間のホスト・ゲスト間の選好性の分子メカニズムを検討する。7. 新たな全ゲノムマッピング法を考案したので、その検討を行い、連鎖解析やHi-Cの代替、あるいは補完を行い方法として確立する。
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