2020 Fiscal Year Annual Research Report
Biological functions of alternative splicing on mouse gastrulation
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20H00444
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉山 文博 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90226481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 聖哉 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10633141)
村田 知弥 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60713485)
久野 朗広 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60830122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マウス / 原腸胚 / 選択的スプライシング / RNA結合タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
着床後、未分化な胚盤葉上層(エピブラスト)の細胞は分裂と増殖を活発に行い、細胞運命決定を導く高度な分化プログラムを正確かつダイナミックに進め、胎児形成を行っていく。その最初の重要なイベントが、発育する胚に近遠位軸や前後軸を形成しながら、外胚葉、中胚葉、内胚葉へと分化していく原腸胚の三胚葉形成である。選択的スプライシングは、限られた遺伝子やpre-mRNAから膨大なトランスクリプトームやプロテオームを作り出し、生物に多様性をもたらす機構である。複数のエクソンを持つ遺伝子の95%は選択的スプライシングが行われていることが知られており、原腸胚形成においても選択的スプラシングは極めて重要なイベントであることが推測されている。pre-mRNAスプライシングはRNA結合タンパク質(RBP)を含む高次なタンパク質複合体であるプロテセオソームの集合が必要である。原腸胚での遺伝子発現とノックアウト(KO)マウス表現形質を解析した著者らの結果において、胚性致死を示す30%がRBP遺伝子KOマウスであり、選択的スプライシングが重要であることが明らかとなった。一方、胚葉形成における選択的スプライシングバリアントの具体的な機能は不明であるため、①胚葉可視化(MIERU)マウスの遺伝的背景において原腸胚で必要不可欠と思われるRBP遺伝子破壊したRBP-KO MIERUマウスを効率的に複数作製可能な胚性幹細胞(ES細胞)を樹立し、RBP-KO MIERUマウスライブラリー作製に着手した。②各RBP-KO MIERUマウスの胚葉特異的なロングリードトランスクリプトームデータソースを構築し、特徴的なスプライシングバリアントと表現型を紐図けるため、テトラプロド法による原腸胚発生とFACSによる各種胚葉細胞の分取とロングリードトランスクリプトーム解析の基盤を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①RNA結合タンパク(RBP)-ノックアウト(KO)胚葉形成可視化マウスの開発 原腸胚期のRBP-KOの表現形質と三胚葉の細胞を分取するため、各々の胚葉を蛍光で識別可能なMIERUマウス(外胚葉マーカーとしてOtx2遺伝子にtdTomatoが、中胚葉マーカーとしてT遺伝子にTagBFPが、内胚葉マーカーとしてSox17遺伝子にEGFPがそれぞれbicistronicに内在性標的遺伝子を生かしたままノックインされている)受精卵にCas9と多様なRBP遺伝子に対するgRNAを組み合わせ三胚葉可視化できるRBP-KOゲノム編集マウスを作製する予定であった。しかしながら、本方法ではRBO-KO MIERUマウスライブラリーを作製するにあたり非常に多くの系統を作製・維持しなくてはならず、多くの無駄なマウスを生み出す可能性が高く、動物実験の3Rsの観点から、胚性幹細胞(ES細胞)を用い、テトラプロイドキメラ法によりF0での解析系に切り換えた。そのため、まずMIERUマウス胚盤胞の内部細胞塊よりES細胞を樹立した。そして、予定通りCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集によりRBP-KO MIERUマウスES細胞作製が順調に進んでいる。
②胚葉特異的なトランスクリプトーム解析とデータソース構築 RBP-KO MIERUマウスES細胞は野生型マウス2細胞胚をテトラプロイド化した桑実胚と凝集キメラを作製し、偽妊娠マウスに移植後、原腸胚にて解析する基盤を構築した。また、三胚葉はFACSにて分画・分取が可能であることを再確認した。さらに、その後のナノポアーシークエンシングMinIONを用いてのロングリードトランスクリプトーム解析および通常のショートリードトランスクリプトーム解析によりスプライシングバリアントや胚葉の遺伝学的特徴系の評価する基盤作りも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
①RNA結合タンパク(RBP)-ノックアウト(KO)胚葉形成可視化マウスの開発と解析 前年度と同様に、原腸胚期の三胚葉形成の可視化と各胚葉の細胞分取のため、各々の胚葉を蛍光で識別可能なMIERUマウス(外胚葉マーカーとしてOtx2遺伝子にtdTomatoが、中胚葉マーカーとしてT遺伝子にTagBFPが、内胚葉マーカーとしてSox17遺伝子にEGFPがそれぞれbicistronicに内在性標的遺伝子を生かしたままノックインされている)ES細胞においてCRISPR/Cas9システムによる標的RBP遺伝子機能欠失をゲノム編集で行い、RBP-KOマウスライブラリーを増やす。各RBP-KO MIERUマウスES細胞はテトラプロイド凝集キメラ法にて原腸胚まで発生させ、胚葉形成状態を形態学的に評価する。
②胚葉特異的なトランスクリプトーム解析とデータソース構築 前年度基盤構築した解析システムにて、異常表現型を示したRBP-KO MIERUマウス原腸胚より胚葉毎に細胞集団を分取し、ナノポアーシークエンシングMinIONを用いてのロングリードトランスクリプトーム解析を実施する。またRNAは分割し、通常のショートリードトランスクリプトーム解析も行う。ショートリードRNA-seqのデータをもとにGene Ontology(GO)実施して、RBP-KOの胚葉毎の遺伝学的特徴を明らかにする。そして、スプライシングバリアントと表現型を紐付けていく。
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Research Products
(2 results)