2022 Fiscal Year Annual Research Report
Structural physiology of channels based on development of cryo-electron microscopy
Project/Area Number |
20H00451
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤吉 好則 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (80142298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼本 修孝 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (20378582)
亀川 亜希子 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (50867554)
谷村 幸宏 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (80546515)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 構造生理学 / 膜タンパク質 / 水チャネル / クライオ電子顕微鏡法 / 単粒子解析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
クライオ電子顕微鏡を用いて、ヒトの体の恒常性を保つ上でカギとなる水分子を中心とする生理機能を、関連する膜タンパク質等の立体構造から詳細に理解することを本研究の目的として研究を進めている。中でもほとんどが脂質膜内に埋まっている水チャネルはクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析が困難な標的であり、実際に、長年努力したにもかかわらず、単粒子解析法では構造解析が出来なかった。この水チャネルについても、独自に開発した第8世代のクライオ電子顕微鏡を用いることによって、構造解析が出来るようになった。それゆえ、水チャネルの構造と機能研究を研究課題の中心としつつ、さらにシグナル伝達機構の理解にとって重要な新たなGPCRsの構造と機能研究も加えて、以下の6課題の研究を進めた。 1) クローディン-18の構造解析を目指して発現・精製・結晶化を進めたが、結晶性が不十分なので、それを向上させる検討を進めた。 2) TJについて、我々のdouble-row modelを検証するために、クライオ電子線トモグラフィーデータを取得し立体構造の解析を行った。 3) 炎症性疾患と代謝性障害などに関わるG蛋白質共役型受容体であるヒドロキシカルボン酸受容体のHCA2とHCA3の2種類のGPCRとGiとの複合体の構造解析に成功した。 4) hAC9とGsとの複合体の発現と精製を行い、クライオ電子顕微鏡のデータ収集も行い、hAC9-Gs複合体の構造解析を行った。 5) 水チャネルAQP2の大量発現と精製に成功し、lipid nanodiscへの再構成にも成功し、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析についに成功した。 6) 5)の課題の成功を受けて、多くのヒト由来の水チャネル、そして比較検討するためにヒト由来ではない水チャネルGlpFなどの構造解析にも挑戦し、これらの構造解析に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、ヒトの体の恒常性を保つ上でカギとなる水分子を中心とする生理機能を詳細に理解することを目指して、困難な研究課題ではあるが膜タンパク質の構造解析を総合的に進めるために、以下の6つの研究課題を進めて、おおむね計画通りの成果を得た。特筆すべき成果として、単粒子解析法では構造解析できなかった水チャネルの構造を解析することに成功した。 1) クローディン-18の発現・精製に成功しており、結晶化にも成功して5Å分解能より良い結晶が得られるようになった。 2) 単一のクローディンからなるTJのクライオ電子線トモグラフィー解析に成功して、我々のdouble-row modelを支持する立体構造が観察された。 3)炎症性疾患と代謝性障害などに関わるGPCRであるHCAR2とHCAR3のGiとの複合体の構造解析に成功して、リガンドの結合様式や、Giを特異的に活性化する機構が理解できるようになった。 4) hAC9とGsとの複合体の構造解析を進めることによって、cAMP生成機構を理解できる見通しができた。 5) 世界的に見ても単粒子解析法で水チャネル単一での構造解析はなされていなかった。このように単粒子解析法で解析するのは不可能と思われていた水チャネルAQP2について、界面活性剤の条件とlipid nanodiscへの再構成の両方の条件で、構造解析に成功した。 6) AQP2の構造解析の成功を受けて、さらに多くの水チャネルが界面活性剤の中にある条件とlipid nanodiscに再構成された条件での構造解析に成功し、構造と機能の比較解析のためにさらにGlpFの構造も解析した。 以上のように、所期の目的である、水チャネルを中心とした恒常性維持機構を高分解能の構造解析に基づいて理解するという研究課題においてブレークスルーと評価できる成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、ヒトの体の恒常性を保つ水分子を中心とする生理機能を、関連する分子の立体構造から詳細に理解することである。2022年度の大きな研究成果として、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法によって、これまで解析できなかった水チャネルの構造がついに解析できるようになった。この成果を基に、以下の5つの研究課題のそれぞれについてさらに研究を進める。 1) クローディン-18の結晶化に成功しているので、結晶性を向上させて、高分解能の構造解析を行う。 2) TJのクライオ電子線トモグラフィー解析に成功しているので、double-row modelとクローディンの構造からTJの構造を理解できるようにする。 3) 新たなGPCRsの構造解析を進めて、GPCRによるシグナル伝達機構を分子構造から詳細に理解することを目指す。 4) hAC9とGsとの複合体の構造解析を行うことによって、cAMP生成機構の理解を目指す。 5) 世界的に見ても単粒子解析法では解析できなかった水チャネルの構造解析が可能になったので、さらに多くの水チャネルの構造解析を進める。これによって、膜タンパク質が脂質膜の中で機能している構造と機能を高分解能の構造解析に基づいて、全く新しい知見を得ることを目指す。特に、水チャネルの速い水透過機構と高い水選択性の機能を分子構造に基づいて理解する。すなわち、水分子が関わる恒常性維持機構の1つの中心課題である、全ての水チャネルにおいてプロトンを透過させない驚くべき機構を提案する。 以上のように、水チャネルをはじめとする膜タンパク質の制御による恒常性維持機構を高分解能の構造に基づいて理解するという研究課題の達成を目指して、研究を進める。
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Research Products
(4 results)