2020 Fiscal Year Annual Research Report
相同染色体の識別と対合に必要なクロマチン構造の分子基盤と形成メカニズムの解明
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20H00454
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平岡 泰 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10359078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 染色体 / 細胞核 |
Outline of Annual Research Achievements |
減数分裂における相同染色体の対合・組換えは、父母に由来するゲノムを再編する重要なプロセスであり、その後に起こる染色体分配を正常に行うために必須である。本研究は、相同なパートナーを見つけるための相同性識別のメカニズムを理解することを目的とする。そのために、生物材料として分裂酵母を用い、生細胞蛍光イメージング・遺伝学解析・生化学解析を用いて、相同性の識別コードとして働くクロマチン構造とその形成メカニズムを解明する。染色体の相同性を識別するクロマチン構造として、減数分裂コヒーシンが作る高次構造、非コードRNAが作る局所構造、ヒストン修飾が作る微細構造に着目して解析する。今年度は、まず、減数分裂コヒーシンが作る高次構造について解析を行った。減数分裂コヒーシンRec8を生細胞で超解像蛍光イメージングするとクロマチンの軸構造が識別できた。Rec8にランダムに変異を導入し、約3000個の株を取得した。蛍光顕微鏡でビジュアルスクリーニングを行い、クロマチンの軸構造が崩れる変異株を取得した。今後、この変異株を利用して、クロマチン構造を解析する予定である。非コードRNAと非コードRNA結合タンパク質によって作られる相分離が減数分裂期染色体構造に重要であることを明らかにした(Hiraoka, 2020)。ヒストンH2A.Zの欠質変異体を用いて相同染色体組換えに必要な要因を検討し、組換え中間体レベルによってクロスオーバ量が調節されていることを明らかにした(Yamada et al, 2020)。核膜とヘテロクロマチン形成との関係を明らかにした(Hirano et al, 2020)。核膜とERの境界形成に重要な因子を発見した(Hirano et al, 2020)。また、核膜の一過的な破裂は、減数分裂後の胞子形成に影響を与えることを明らかにした(Yang et al, 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相同染色体の識別と対合に必要なクロマチン構造として、減数分裂コヒーシンRec8依存的なループ構造は重要な貢献をすると考えている。その解析に必要な変異体を作製することができた。この変異体の作製は、今後の解析に重要な成果である。相同組換えに対するヒストンH2A.Zの役割を検討し、論文に至る成果を上げた。また、減数分裂期の相同染色体対合に相分離が重要であることを、論文にした。核膜の役割について検討し、論文に至る成果を上げることができた。これらのことから、「概ね順調に進んでいる」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
独自に作製した減数分裂コヒーシンRec8の変異株を遺伝的に解析するとともに、ループ軸構造を蛍光顕微鏡イメージングや生化学的に解析し、相同染色体対合への影響を検証する。クロマチンループ軸構造をさらに詳細に解析するためにHi-C法を用いる。Hi-C法は互いに近接するDNA領域をマップすることにより、DNAの折畳みパターンを図示するものである。Hi-C解析を行い、イメージング解析と併せて、野生株とRec8変異株で構造のパターンを比較する。非コードRNAが作る局所構造の解析については、試験管内で相分離を起こす条件を検討し、液滴の物理化学的特性の分析を進める。ヒストン修飾が作る微細構造については、ヒストン修飾と相互作用する因子を同定するために、ヒストンH4のK8とK12がアセチル化されたペプチド断片を作製し、その断片に特異的に結合するタンパク質を同定する。得られた因子について、遺伝子破壊などの解析を行い、ヒストン修飾と相同染色体対合との関連を調べる。さらに、ヒストンH4のK12のアセチル化を生細胞で追跡し、このアセチル化が減数分裂過程での変動を解析する。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Asymmetrical localization of outer ring nucleoporins within the nuclear pore complex in fission yeast2020
Author(s)
Asakawa H, Kojidani T, Matsuda A, Yang H-J, Ohtsuki C, Osakada H, Iwamoto M, Chikashige Y, Nagao K, Obuse C, Hiraoka Y, Haraguchi T
Organizer
第43回日本分子生物学会年会
Invited
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