2021 Fiscal Year Annual Research Report
相同染色体の識別と対合に必要なクロマチン構造の分子基盤と形成メカニズムの解明
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20H00454
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平岡 泰 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10359078)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 染色体 / 細胞核 |
Outline of Annual Research Achievements |
減数分裂コヒーシンRec8にランダムに変異を導入し、約3000個の株に対して、蛍光顕微鏡でビジュアルスクリーニングを行い、姉妹染色分体の接着が正常にもかかわらず、クロマチン軸構造が崩れる変異株を探した。クロマチン軸構造が崩れる変異株は約100株得られたが、これのほとんどは、姉妹染色分体の接着も異常になっており、クロマチン軸構造形成と姉妹染色分体接着の機能は密接に連関していることが示された。しかし、姉妹染色分体の接着が正常にもかかわらず、クロマチン軸構造の形成に障害を持つ変異株を1株だけ取得できた(Rec8-F204S)。Rec8欠損株およびRec8-F204S変異株でHi-C法を用いてDNAの折畳みパターンを分析した結果、これらの株では、クロマチン軸構造が崩れることが明らかになった。さらに、変異株では相同染色体対合と組換えの頻度の低下が見られた。これらのことから、Rec8がクロマチン軸構造の形成および相同染色体対合・組換えに必要であると結論した。この成果は、原著論文を Nucleic Acids Research誌に発表するとともに、総説として紹介した(Sakuno et al, Nucleic Acids Res 2022; Sakuno & Hiraoka, Genes 2022)。また、相同染色体対合に対するシナプトネマ複合体に類似する構造の寄与についても明らかにし、論文を発表した(Ding et al, Chromosoma 2021)。これらのことを総合して、 Rec8が作るクロマチン軸構造が相同染色体の整列に寄与し、その後に相同領域に非コードRNAタンパク質複合体が形成され、相分離によって相同染色体がたぐり寄せられるというモデルを提唱した(Hiraoka, Curr Genet 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
減数分裂コヒーシンRec8の2つの機能(姉妹染色分体接着とクロマチン軸構造形成)は密接に連関しており、これまで切り離すことができなかった。今回、姉妹染色分体の接着が正常にもかかわらず、クロマチン軸構造が崩れる変異株が1株得られた。この株を用いることによって、クロマチン軸構造の形成が相同染色体対合・組換えに必要であることが結論でき、論文発表に至った。さらに、シナプトネマ複合体様構造や非コードRNAタンパク質複合体が相同染色体の対合に果たす役割についても、論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにRec8がクロマチン軸構造の形成に中心的役割を果たすことを報告したが、これをさらに掘り下げ、Rec8相互作用タンパク質、特にRec8をクロマチンにロードするタンパク質のクロマチン軸構造形成における役割を解析する。Rec8クロマチンローダータンパク質のランダムに変異を導入し、蛍光顕微鏡でビジュアルスクリーニングを行い、クロマチン軸構造が崩れる変異株を取得する。得られた変異株について、セ細胞蛍光イメージングや生化学解析、 Hi-C解析等で、クロマチン軸構造への影響を検証する。 非コードRNAが作る局所構造の解析については、引き続き、非コードRNAとその結合タンパク質が作る液滴の物理化学的特性の分析を進める。 ヒストン修飾が作る微細構造については、引き続き、ヒストンH4のリジン残基K5、K8、K12およびK16がアセチル化されない変異株の体細胞分裂と減数分裂への影響を調べ、ヒストンH4アセチル化のクロマチン機能制御における役割を解析する。
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Research Products
(22 results)