2021 Fiscal Year Annual Research Report
Structural elucidation of Wnt signaling mechanism using unique chemical tools
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20H00455
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高木 淳一 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (90212000)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Wntシグナル / ケミカルバイオロジー / 立体構造解析 / 環状ペプチド / アンタゴニスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、様々な組織幹細胞の分化状態を制御する鍵因子であるWntシグナルパスウェイについて、ケミカルバイオロジーツールの作用メカニズムの解明を通してその分子論の理解を深めるとともに、環状ペプチドをプローブとしてWntシグナル伝達系の機能構造研究に応用することを目指し、以下の2つの業務項目に従って研究を進めた。なお、プロジェクト開始時に存在した業務項目①、③、④については本年度の研究計画時に記載したように終了もしくは中止としたので記載しない。 (項目2)LRP6:USAG-1相互作用の構造基盤とWntシグナル阻害メカニズム:USAG-1(内因性のWnt阻害物質)と同様な構造と活性をもつSOST蛋白質とLRP6の複合体の結晶構造が2020年に報告された。USAG-1についてもほぼ同様の構造であることが予想されるため、LRP6-USAG1複合体結晶化の優先順位をさげ、その代わりに京都大学の高橋克博士と共同で作製したUSAG-1(内因性のWnt阻害物質)の中和抗体について、そのエピトープの同定を進めた。樹立した10数クローンの抗体のうちから5種類に絞り、すでにエピトープ同定に成功したE57以外の4つについてUSAG-1の欠失変異体を使ったエピトープマッピングを進めると同時に組み換え生産をおこなった。 (項目5)アファミン結合環状ペプチドの取得とWnt3a精製への利用:マウスWnt3a結合性環状ペプチドPD04についてはWnt3aとの結合親和性の低さと水溶性の低さのために研究ツールとしての利用を見送ったが、あらたにWnt3aのキャリア蛋白質であるアファミンに対する環状ペプチド探索を始め、2つのペプチド配列を単離した。これらペプチドはLassoGraft法によってFc蛋白質中に埋め込む事が可能で、この改変Fc蛋白質がアファミン-Wnt3a複合体に対して親和性を有することを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目2については5つの抗体の遺伝子配列(共同研究者により取得)を入手して組み換え発現をおこなったが、マウスIgGのままでは多くのクローンで極めて発現が悪く、まだ大量精製には至っていない。全ての抗体について定常領域をヒトIgGに変換することにより良好な発現を見せるようになったので、問題は解決したが、おかげで計画に遅れが生じた。項目5については、迅速にアファミン結合ペプチドの探索が終わり、精製ツールとして利用できる可能性のあるペプチド2種類を入手できた。以上のように、目的を達成できた事項と計画変更を余儀なくされた未達事項が混在することから、「概ね順調な進展」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
項目2については構造解析のために組み換え発現で得た5つのUSAG-1抗体の抗原結合能を確認した後、構造解析のためにこれを結晶化に適した「Fv-clasp」フォーマットに変換する。それと同時に、USAG-1も結晶化に向けて最適化断片を作製する。この際、当研究室で最近開発した「short-hinge Fc(shFc)融合ベクター」を利用する。項目5については、アファミン結合性ペプチドを用いたアファミン-Wnt複合体の精製について、同複合体を安定発現する細胞株の上清を用いて検討する。
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Research Products
(16 results)