2022 Fiscal Year Annual Research Report
プレエンプティヴ品質管理を介した低分子量Gタンパク質の新しい制御機構とその意義
Project/Area Number |
20H00457
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
川原 裕之 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70291151)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Ubiquitin / Proteasome / Protein degradation / Protein quality control / Pre-emptive / BAG6 / Membrane traffic / Rab8 |
Outline of Annual Research Achievements |
低分子量Gタンパク質群は、シグナル伝達の中核をなす膜結合タンパク質である。従来、安定な生体分子と考えられてきた低分子量Gタンパク質が、GDP型特異的にBAG6タンパク質を介して認識されることを我々は見いだした。BAG6タンパク質の抑圧はGDP型の蓄積を誘導し、小胞輸送を障害する。多彩な機能を持つ他の低分子量Gタンパク質群も、BAG6の標的となることが新しく判明し、その意義と標的識別メカニズムの解明が、課題となっていた。本研究では、BAG6依存的な低分子量Gタンパク質群の分解に焦点を当て、Gタンパク質に関する記述を書き換える提案に挑んでいる。本研究期間中に我々は、極めて安定な膜タンパク質と考えられてきたRab8a及びRab10が、(1)GDP型特異的にプロテアソームによる急速分解を受けること、(2)GDP型Rab8aのユビキチン化にプレエンプティヴ経路(BAG6の他にUBQLN4並びにRNF126から成る)が必須であること、(3) プレエンプティヴ経路が小胞輸送の調節に必須であることを見いだした (iScience, 2023)。これらの知見は、低分子量Gタンパク質に全く新しい制御システムが存在することを示している。 また我々は、プレエンプティヴ経路が一次繊毛の形成に必須の役割を有することを見いだした。一次繊毛の形成は、Rab8a及びRab10が寄与することが知られている。そこで、我々は、一次繊毛の形成にBAG6, UBQLN4並びにRNF126が関与する可能性を調べた。その結果、これらを抑圧すると、いずれも一次繊毛の形成が顕著に低下することを見いだした。 さらに我々は、低分子量Gタンパク質RhoAの分解がBAG6による阻害されること、RhoAの安定化はストレスファイバーの正常な構築に寄与することも見出した(Mol. Biol. Cell, 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低分子量Gタンパク質の多くは、これまで極めて安定と考えられてきた。実際に、細胞内で大多数を占めるGTP型は長い半減期を示す。そのため選択的分解に関連した知見は、これまでほとんど存在しなかった。我々はプレエンプティヴ経路に依存的な、「GDP型特異的」Rab8a分解を見いだし、この破綻が膜輸送を阻害することを突き止めた(iScience, 2023)。さらに、GDP型Rab8aのみならず、多くの低分子量Gタンパク質群の量的調節因子として、プレエンプティヴ経路を新しく見いだしつつある(Mol. Biol. Cell, 2023)。出発・到着オルガネラが物理的に隔たるGタンパク質の場合、到着地で不活性化(GTP加水分解)されたGDP型が、その後どのような運命を辿るのかは、現在もほとんど理解されていない。本研究では、GDP型Gタンパク質の分解運命を初めて解明する新しい学術的概念の提出に成功しつつある。特にGDP型Gタンパク質の異常蓄積は、オルガネラ恒常性の破綻を伴う多くの病態と直結する。膜輸送や細胞遊走の異常から生じる多くの疾患の理解と治療法 開拓に向けて、本研究は極めて大きな波及効果と独自性を有している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、BAG6による分解ターゲティングが必須である低分子量Gタンパク質 (EMBO Rep. 2019, iScience 2023) をモデルに、プレエンプティヴ品質管理マシナリーが標的G タンパク質を峻別するメカニズムを解明する。これまでの我々の研究から、Rabタンパク質のGTPaseドメインに存在するSwitch I領域が、BAG6との相互作用ならびにGDP型特異的不安定性を支配していることがわかった。得られた構造変化情報を、BAG6変異体(GDP型Rab8aを認識できない変異)のデザインへと還元し、プレエンプティヴ経路が低分子量Gタンパク質を制御する意義解明へと繋げる。 一方、BAG6複合体には、基質認識のブレーキとして機能するサブユニット群が存在する。我々は既に、BAG6複合体サブユニットの解離会合をスプリット-ルシフェラーゼの原理で定量する実験系(Nano-BIT)の構築に成功している。この系に分子間相互作用解析装置を用いた定量アッセイを組み合わせ、薬剤によるサブユニット間相互作用 の阻害を探索する。BAG6複合体「抑制」サブユニットとの会合を「遮断」する化合物を同定することで、プレエンプティヴ経路を自在に「活性化」しうるシステムを創出し、同経路の減弱がもたらす2型糖尿病やリソソーム病などを標的とした次世代の創薬への突破口を開く。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Protein quality control machinery supports primary ciliogenesis by eliminating GDP-bound Rab8-family GTPases.2023
Author(s)
Takahashi T, Shirai J, Matsuda M, Nakanaga S, Matsushita S, Wakita K, Hayashishita M, Suzuki R, Noguchi A, Yokota N, *Kawahara H.
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Journal Title
iScience
Volume: 26
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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