2022 Fiscal Year Annual Research Report
組織学と複合した単一細胞DNAメチル化解析法による原始卵胞淘汰過程の解明
Project/Area Number |
20H00471
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
栗本 一基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20415152)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 配偶子形成 / 生殖細胞 / シングルセル / 単一細胞 / トランスクリプトーム / 組織切片 / 形態 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はトランスクリプトーム解析技術をDNAメチル化解析技術(tPBAT)によりよく適応可能なように拡張した。すなわち、DNAメチル化解析と組織解析をより良く統合するためには、アルコール固定だけでなくホルマリン固定された組織に適用できることが望ましい。またホルマリン固定に適応することで、原始卵胞など小さな組織学的構造や、マウス以外の多様な生物由来のサンプルの解析への適用性が向上すると期待される。そこでアルコール固定された凍結切片に対する溶解法(DRaqL法)に加えて、ホルマリンで強く固定された切片(10%, 24hr)から採取した単一細胞を効率よく溶解し、直接cDNA増幅を適用可能な手法を開発した。架橋されたタンパク質からRNAを可溶化するために、DRaqLとプロテアーゼ処理を組み合わせた。ホルマリン固定された組織からの核酸の可溶化にはProteinase Kがよく用いられるが後続の酵素を分解しcDNA合成反応等を阻害してしまう。このためプロテアーゼの不活化が必要であるが、90度10分以上の過熱などの過激な条件か、化学的に架橋する阻害剤が必要である。先行研究に阻害剤を用いたcDNA増幅手法があるが、我々の再現実験では効率のよいcDNA増幅は得られなかった。これは化学的活性のある阻害剤は阻害剤自体の安定性が十分でないために期待される阻害活性を安定して得ることが難しいためであると考えられた。このため、加熱によって失活させることができるプロテアーゼを用いて、再現性の高い結果を得ることができた(DRaqL-Protease法)。卵巣切片に適用すると正しく顆粒層細胞と卵母細胞を区別することができた。さらに卵巣オルガノイドを用いて動的に卵胞形成過程をモニターして切片からの形態-オミクス解析技術を検証する系を立ち上げており、蛍光レポーターを導入する実験系をセットアップしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、DNAメチル化解析への複合適用性を向上させるための切片からのcDNA増幅法を大幅に改善した。このことにより、DNAメチル化解析法の方が満たすべき条件が緩和された。このためDNAメチル化解析と遺伝子発現解析の複合技術の開発はおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
緩和されたDNAメチル化解析の実験条件に適用する手法を検討する。微量DNAライブラリの作出手法を改善し、切片から回収された「シングルセルに適用可能なライブラリ作出条件を検討する。適切な条件が得られたら、新鮮な状態で採取した1細胞および、切片から採取・溶解した細胞からのPBATライブラリの作成を検討する。卵巣オルガノイドを用いた動的なモニタリングとの複合解析も進める。
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