2021 Fiscal Year Annual Research Report
光合成を基盤とした細胞内共生進化の初期における宿主細胞の進化過程の解明
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20H00477
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
宮城島 進也 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (00443036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 優介 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 助教 (20800692)
岩根 敦子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (30252638)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
単独培養とそれぞれゾウリムシおよびアメーバ宿主との共生状態について、クロレラ(それぞれミドリゾウリムシとミドリアメーバより単離した株)のトランスクリプトーム情報を比較解析した結果、どちらの場合も共生時に光合成関連遺伝子群の発現が上昇することが明らかとなった。ミドリアメーバからはアメーバによる維持期間の長い(共生関係の強い)クロレラ株と短い(共生関係の弱い)クロレラ株(それぞれB株とA株)が得られていたが、共生時の光合成関連遺伝子群の発現上昇は共生関係の強いB株のみで認められた。 さらに、ミドリゾウリムシおよびミドリアメーバ由来のどちらのクロレラも、単独培養においては、無機窒素源としてアンモニウムを利用できるが硝酸を利用することができないことが判明した。また、どちらも窒素源として各種のアミノ酸を利用でき、ミドリゾウリムシから単離したクロレラにおいては、アミノ酸に比べて無機窒素の利用効率がかなり低いことが明らかとなった。 昨年度新規に単離しその培養系を確立した藻食(珪藻を捕食)アメーバを、暗黒下、弱光下、強光下で培養した結果、強光下では消化中の珪藻が変色するという現象を見出した。 さらに、新規の材料取得を進め、屋外からミドリゾウリムシとミドリアメーバの新規株に加え、ミドリラッパムシ、ミドリタイヨウチュウを採集することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
任意共生系(ミドリゾウリムシおよびミドリアメーバ)において、宿主が共生藻に窒素源(アミノ酸)を供給することにより共生体の光合成を促進していることを示唆する結果を得ることができた。さらに、藻食アメーバが、餌による光合成酸化ストレスが生じる強光下では、そうではない暗黒下や弱光下とは異なる消化様式を取る可能性が示唆された。このように新規知見を十分に得ることができたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
実施項目1:ミドリラッパムシとミドリタイヨウチュウ(微細藻類との任意共生系)の共生藻の解析 前年度に生息地を見つけたミドリラッパムシとミドリタイヨウチュウについて、細胞内共生状態のクロレラと単独培養状態のクロレラのトランスクリプトーム比較を行う。前年度までに同様の解析を行ったミドリゾウリムシとミドリアメーバの結果と統合し、クロレラが細胞内共生する時に起こる変化の共通点を明らかにする。
実施項目2:ミドリアメーバ(微細藻類との捕食―被食系、任意共生系)を用いた、捕食と共生比較解析 捕食と共生のために宿主に必要とされる機構の違いを明らかにするために、餌の存在下で、ミドリアメーバ細胞内から共生クロレラを除去し、無色のアメーバを培養する方法を確立する。
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