2021 Fiscal Year Annual Research Report
神経個性を表象する神経活動パターンと遺伝子発現制御
Project/Area Number |
20H00482
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 春樹 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任准教授 (70548859)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 嗅覚 / 神経活動 / 神経回路形成 / 発達 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスの嗅覚系では、匂いを受容する嗅覚受容体が神経回路形成時にも重要な役割を果たすことが知られている。嗅覚神経細胞で発現するたった一種類の嗅覚受容体分子は、神経活動を介して様々な軸索選別分子の発現を制御することを通じて、軸索と呼ばれる神経突起を適切な箇所へとガイドする。本年度は、細胞ごとに異なる神経活動の時間変化パターンがどのように異なる軸索選別分子の発現パターンへと変換されるのかを明らかにするために、嗅覚神経細胞で発現するカルシウム依存性転写調節因子の網羅的なノックアウト実験を実施して、軸索選別分子群の発現へ与える影響を調べた。 ・嗅神経細胞では4種類存在するカルモジュリンキナーゼIIのサブタイプのうち4種類が発現している。単独のノックアウトマウスでは、軸索選別分子の発現に影響はなかったが、3種類を同時にノックアウトした場合のみ軸索選別分子のうちプロトカドヘリン10(PCDH10)の発現が大幅に減少した。 ・カルシニューリンのカルシウム結合サブユニットであるCNB1のノックアウトマウスにおて、Kirrel2という軸索選別分子の発現が大幅に減少し、PCDH10の発現が上昇することを見出した。 ・カルモジュリンキナーゼⅣ、NK-κBの転写活性化ドメインであるRelAのノックアウトでは軸索選別分子への発現変化は観察されなかった。
先行研究から、Kirrel2とPCDH10は異なる神経活動パターンにより発現が誘導されることがわかっている。以上の結果から、異なる神経活動パターンは、異なるカルシウム転写調節因子を活性化することにより異なる軸索選別分子の発現を制御していると示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウム依存性転写調節因子の網羅的ノックアウト実験において、候補となる遺伝子は多数存在するが、現時点の解析で複数の軸索選別分子の発現を制御する遺伝子の同定に成功している。まだ、解析途中の遺伝子も残っているが、すでに交配、繁殖を進めており実験自体は予定通り進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、MAPキナーゼファミリーの中から嗅神経細胞で発現の高い4種類の遺伝子、IP3受容体のサブタイプ3種類の同時ノックアウトマウスも交配中である。個体が得られ次第、組織化学染色、RNAシークエンスにより遺伝子発現解析を実施する。個体が得られにくい場合には、コンディショナルノックアウトマウスの作出や阻害剤による実験に切り替える。一連の実験により、嗅覚神経細胞で発現する主要なカルシウム依存性転写調節因子のノックアウト解析が完了する予定である。
|