2022 Fiscal Year Annual Research Report
ダメージ関連分子による炎症・免疫応答系の制御機構の解明
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20H00504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 維紹 東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (50133616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半谷 匠 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員研究員 (50785350)
柳井 秀元 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (70431765)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫シグナル伝達 / 恒常性維持 / 自然免疫受容体 / TCTP / がん / 炎症 / DAMPs / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己由来分子による炎症・免疫応答の調節機構を解明し、その破綻としての各種疾患の発症についての理解を深めることにある。死細胞やスト レスを受けた細胞からダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)と呼ばれる自己由来分子が放出され、それらが炎症・免疫系を 調節することが注目されつつある。しかしながらその本体や作用機構には未知の点が多い。我々はこれまでに代表的なDAMPであるHMGB1(High-mobility group box-1 protein)の機能解析を推進するとともに、TCTP(Translationally-controlled tumor protein)やU11 small nuclear RNA(U11 snRNA)をはじめとする新規DAMP分子群を独自に同定している。本年度において、細胞外HMGB1の機能を解析するため、恒常的にHMGB1を細胞外に放出させる仕組みを組み込んだコンディショナルノッ クインマウスを作成し、解析を進めた。また、細胞外に放出されたTCTPが腫瘍微小環境中に骨髄由来免疫抑制細胞(PMN-MDSCs)をリクルートし、抗腫瘍免疫応答を抑制することを突き止め、細胞外TCTPは腫瘍増殖を促進することを明らかにした。またさらに、細胞外TCTPの機能を阻害する中和抗体の作成を進めている。またさらに、免疫応答制御に関わる新たなDAMPsについて同定と解析も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ研究は順調に進められている。免疫抑制的な腫瘍微小環境形成を促進する新規DAMP分子としてTCTPを同定したが、細胞外TCTPの機能を阻害する中和抗体の作成を進めており、現在複数の候補の抗体が得られている。またHMGB1について、in vivoでの細胞外HMGB1の機能を探るため、恒常的にHMGB1を産生するノックインマウスを作成して解析を進めているところであ り、新たな機能を見出すことが期待できる。またさらに、新規DAMPsの探索、同定も進めており、新たなDAMP分子の機能解明が進むものと期待される。またU11snRNAについては、機能改変を進め、解析を行っているところである。上述のことから、研究は計画に沿って順調に遂行されており、今後の発展が期待できる状況である。したがって、現在までの研究の進捗状況は概ね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初研究計画に沿って研究を推進していく。TCTPについては作成しつつある中和抗体を用いて腫瘍などの病態を抑制できるかどうか検討を進めていく予定である。また新規DAMPsの同定、機能解明を引き続き進めていく予定である。また、HMGB1ノックインマウスの解析、U11snRNAの機能改変も進めていく。予想のつかなかった進展、または困難が生じた場合には、追加検討または代替法を取り入れ、解析を進めていく予定である。以上の解析から、DAMP分子群を介した炎症・免疫反応と生体恒常性維持機構の解明と疾患病態との関わりについて、包括的理解を目指していく。
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