2021 Fiscal Year Annual Research Report
多層的モデルの解析に基づく老化と関連疾患の分子病態解明
Project/Area Number |
20H00524
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横手 幸太郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20312944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 啓 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (10570616)
鈴木 佐和子 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60400892)
前澤 善朗 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80436443)
黒滝 陽子 公益財団法人実験動物中央研究所, マーモセット基盤技術センター, 室長 (80771229)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウェルナー症候群 / マーモセット / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) WS患者iPS細胞由来間葉系細胞における細胞老化の分子メカニズム: WS患者由来iPS細胞(WS-iPSC)から分化誘導した間葉系幹細胞(WS-MSC)は増殖能の低下、P16などの老化関連マーカーやSenescence Associated Secretary Phenotype (SASP)と呼ばれる炎症性サイトカインの増加を呈し、細胞老化の表現型が再現された。このWS-iPSC由来MSCと、WRN変異を遺伝子編集技術により修復した同一背景のMSCを比較検討したところ、WSにおいては複数のエピゲノム関連遺伝子の発現変化が認められた。加えてWS-MSCにおいて発現変化する複数のmicroRNAを同定した。 2)早老症皮膚潰瘍・褥瘡モデルを用いたMSCの効果と機序解明: WSで好発する難治性皮膚潰瘍における治療可能性を検討するため、野生型マウスの皮膚潰瘍モデルにWS-MSCを投与したところ、野生型と比較して治癒を遅延させることを見出した。この原因を解析したところ、一部の血管新生因子がWS-MSCで減少していること、増殖因子の受容体やそのサブタイプの発現や転写後修飾にも異常が見られることが判明した。 3)マーモセットを用いた早期老化モデル動物の作成: 非ヒト霊長類の早老症モデルとして、遺伝子編集技術Talenを用いたWrn KOマーモセットの作成を試みていたが、2021年度6月に世界初のウェルナー症候群霊長類モデル作成に成功した。現在まで、Wrn KOマーモセットはまだヒトの小児年齢であり、明らかな早老徴候は見られていないため、注意深く経過観察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、WS患者iPS細胞由来間葉系細胞の早期老化メカニズム解明、早老症皮膚潰瘍・褥瘡モデルを用いたMSCの効果と機序解明、早老症マーモセットモデ ル作成の3プロジェクトそれぞれにおいて、新たな知見が得られ特にマーモセットについては世界初のウェルナー症候群霊長類モデルの作成に成功した。網羅的遺伝子解析、エピゲノム解析と老化のメカニズムにつ いても一定の進捗が見られており、順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) WS患者iPS細胞由来間葉系細胞の解析:MSC の分化誘導過程において早期に老化徴候が顕在化することから、この継代老化の複数の時点で遺伝子発現解析やエピゲノム解析を行い現在データ解析中である。また、本検討に空間的情報を加えるために、ウェルナー症候群患者の手術検体が生じた場合、Visium法を用いた空間オミックス解析を行う。また、AQ法を用いて精度の良いmicroRNAの網羅的解析を行っており、WSにおいて発現変動するmicroRNAを同定し統合解析が進行中である。 2)早老症皮膚潰瘍・褥瘡モデルを用いたMSCの効果:一部の増殖因子の発現並びにそのシグナリング経路が、WS-MSCにおいて異常を呈することが判明した。この機能が、WRN遺伝子欠損により惹起されるメカニズムの解析を行い、これがウェルナー症候群に特異的か、それとも一般老化においても見られるのかを明らかにする。 3)マーモセットを用いた早期老化モデル動物の作成 現在、Talenを用いた遺伝子編集により、Wrn KOマーモセットの第一個体を得ており、このモニタリングを続行する。今までに、中性脂肪の高値を認めている。さらに白髪、白内障による視力低下、皮膚の変化、耐糖能異常や脂質代謝異常、サルコペニアや四肢の皮膚萎縮といった、一般的あるいは早老症特異的な老化症候の出現について、外観の観察、血液データの採取、筋力や活動度の測定、CTやMRIなどを用いて評価し、ヒトに近い霊長類の早老症モデルとしての表現型を検討する。
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