2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Universal Cell Therapy for Hemophilia A 
Project/Area Number |
20H00531
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
嶋 緑倫 奈良県立医科大学, 医学部, 副学長 (30162663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 恭二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30333446)
辰巳 公平 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70555432)
荻原 建一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50623500)
小田 朗永 奈良県立医科大学, 医学部, 特任助教 (80547703)
坂田 飛鳥 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90528457)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血友病A / iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 第VIII因子 / 肝類洞内皮細胞 / 細胞シート / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血友病Aに対するユニバーサル治療としての同種細胞療法の臨床応用実現化を目指し、主に治療用細胞の最適化と移植技術の改善を基盤として、治療 効果向上を図ることを目的とするものである。具体的には、1)iPS細胞や間葉系幹細胞等の幹細胞技術を駆使した、血友病A細胞治療に最適な第VIII因子産生細胞の作製、2)当該細胞から産生される第VIII因子タンパクの機能解析、3)効率的かつ長期的な細胞生着を可能とする移植法の開発(細胞調整法、移植部位、移植手技、移植細胞数、移植回数、移植時期等)、4)長期安全性および異常発生時の移植細胞除去法、についての一連の検討を、主に血友病Aモデルマウスを用いて実施・検証する研究である。 令和3年度は、初年度に開発したヒト間葉系幹細胞からの肝類洞内皮細胞(第VIII因子の産生責任細胞)誘導法のさらなる改良にとりくみ、肝類洞内皮細胞マーカーの著明な発現増加に加え、第VIII因子の遺伝子発現増加・タンパク産生増加に成功した。また、その確立したプロトコールを一部改変してヒトiPS細胞にも適用できることを見出した。現在、これら分化細胞の細胞シート作製法の開発にとりくんでいる。その一環で、細胞シート作製に用いる温度応答性培養皿の加工を行っている。具体的には、培養皿表面に、肝類洞内皮細胞の機能向上化が期待できる分子を化学修飾することで、作製細胞シートの高機能化を目指している。将来的にはこれらの作製細胞を細胞シート化した上で血友病Aマウスに移植してその治療効果を確認する予定であるが、ヒト細胞を受容させるためには免疫不全のマウスを使用する必要がある。その目的で、CRISPR-Cas9技術を用いて免疫不全background (SCID)の血友病A(F8-KO)マウスの作製に取り組み、初代マウスの作出に成功し、現在これらマウスを安定的に繁殖できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種幹細胞(iPS細胞、間葉系幹細胞)の分化誘導による治療用細胞(肝類洞内皮細胞)の作製は順調に進んでいる。特に、間葉系幹細胞からの肝類洞内皮細胞の分化誘導については、これまで世界的にも成功報告例が極めて少なく、まして、第VIII因子の産生能を有した細胞作製の報告例はない。我々が分化誘導して作製した肝類洞内皮細胞は、肝類洞内皮細胞特異的な遺伝子発現やタンパクマーカー発現が認められるのみならず、血管チューブ形成能やLDL取り込み能など、肝類洞内皮細胞の特異的機能も明らかに獲得していることを確認しており、これら研究成果をまとめ近日中に論文投稿する予定である。 さらには、将来的に細胞移植実験に使用予定の免疫不全血友病Aマウスの作出・繁殖にも成功した。3 年目には作製した細胞の細胞シート化および細胞移植実験を、計画通り実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、下記の研究に取り組む。 1)各種幹細胞からの肝類洞内皮細胞の分化誘導法のさらなる改良 すでに、肝類洞内皮細胞の分化誘導に成功しているが、第VIII因子タンパクの細胞内検出量と、培養上清中の検出量に幾らかの乖離が認められており、第VIII因子タンパクの分泌機構がまだ十分に獲得できていない可能性がある。本細胞を生体内に移植することで、生体内環境に順応して自然に成熟化・第VIII因子タンパク分泌能を発揮することも十分期待できるが、一方で、in vitroでより成熟化した肝類洞内皮細胞を作製する手法を確立しておくことも必須と考える。 2)肝類洞内皮細胞の細胞シート化および移植実験 細胞シートは基本的には既存の温度応答性培養皿を用いて作製する予定であるが、その際の播種条件・温度条件などを最適化する。さらには、培養皿表面に固相化されている温度応答性高分子に対して、肝類洞内皮細胞の機能向上化が期待できる分子を化学修飾することで、作製細胞シートの高機能化を目指す。次いで、作製した細胞シートの免疫不全血友病Aマウスへの移植実験を開始する。細胞シート移植の比較対照として、作製細胞を経脾的に肝臓に注入移植する実験も並行して行う。細胞シートの移植は、皮下移植や肝表面移植を想定しており、治療効果向上の目的で重層化細胞シートや共培養細胞シートの移植も視野に入れている。移植後、経時的に採血を行い、血漿中の第VIII因子タンパクの抗原量をELISAで、凝固活性を凝固一段法やトロンビン生成法で評価する。また、血管へのレーザー障害により惹起される血栓形成をin vivo imagingで評価する検討も行う。一定期間の経過観察ののち、移植部位の組織学的解析を実施し、また、 テールクリッピング試験による出血時間の定量を行うことで、細胞シート移植の治療有効性を総合的に評価する。
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Research Products
(3 results)