2020 Fiscal Year Annual Research Report
生命発動と器官発生・制御に関わるヒト受精胚分子機序の解明
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20H00550
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
阿久津 英憲 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生殖医療研究部, 部長 (50347225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐渡 敬 近畿大学, 農学部, 教授 (70321601)
中林 一彦 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 室長 (10415557)
高田 修治 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 部長 (20382856)
深見 真紀 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 部長 (40265872)
福田 篤 東海大学, 総合医学研究所, 講師 (00638091)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | female細胞 / X染色体不活化 / 器官発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
X染色体を2つ持つfemale細胞(XX)では、遺伝子発現量補正のため一方のX染色体の遺伝子発現が抑制される(X染色体不活化)。ヒトでは、X染色体不活化の乱れが流産、不育症や先天性疾患の病態、さらに成体(女性)での乳癌などの悪性腫瘍などとも関係する。重要なことに、このX染色体不活化は着床前期の胚盤胞期で決まった状態が一生維持されることにある。受精卵~着床期でのX染色体不活化プログラムを明らかにすることは、卵子の全能性獲機構のみならず女性の健康に関わる生命動態を「女性の細胞」視点で明らかにすることである。本研究では、臓器発生と成体での疾患動態に繋がるX染色体不活化動態を含め胚発生で時空間的にダイナミックに変動する機構解明を目指す。受精胚から獲得する女性固有のサイトジェネティクス動態を発生と器官発生・制御への理解のもとに深め、女性医学の様々な分野の発展に貢献していく。これまで、Oct4遺伝子がクロマチン凝縮から弛緩状態を導くクロマチンオープナーとしての関与することを明らかにした。着床期以降の成人型X染色体不活化の確立にOct4の時空間制御が関連していることを報告した。今回さらに、Xist遺伝子ノックアウトマウスを応用し胚盤胞の内部細胞塊部分から原始内胚葉とエピブラストを単離し、single cell RNA-seq解析から、原始内胚葉細胞(PrE)では卵子刷込み型Xist発現が維持されている一方でエピブラスト(EPI)ではクロマチンの初期化が起こっていた。Oct4以外にも多能性転写因子を抽出することが出来た。さらに、XIST遺伝子の疾患との関係性について、国際専門誌へ報告することができた(Sado T. in press)。受精胚から疾患成因との流れの中で分子プログラムを解析する研究基盤が整い、その方向性の重要さを提示することも出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果と今年度の成果からも動物モデルでのロバストネスを実証することが出来た。これをさらに、ヒトの発生(生命発動)と疾患との関連性でアプローチするフェーズに移行していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、ヒト多能性幹細胞モデルの新規的なモデルの発表が相次ぎ(Nature 2021)、本研究班でも構築を急ぐ必要がある。一方で、ヒト受精胚の14日ルールの議論も国際的に活発になってきた。研究を遅滞なく進め、研究制度上も社会的貢献していきたい。
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Research Products
(8 results)