2021 Fiscal Year Annual Research Report
Augmented Reality based on Ensuring Perceptual Consistency
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20H00608
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 博一 奈良先端科学技術大学院大学, デジタルグリーンイノベーションセンター, 教授 (70221182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 敏之 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60324472)
蒲池 みゆき 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (70395101)
山本 豪志朗 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70571446)
斎藤 英雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90245605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 拡張現実感 / 認知的整合性 / 知覚・認知プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の加藤のグループでは、速さの知覚に関して、拡張現実感を用いた自動車運転時の速度認知特性を調べるために前年度に構築した実験システムを用いて被験者実験を実施した。仮想物体の表示が運転速度に与える影響に関して、基礎的な知見を得ることができた。 研究分担者の斎藤のグループでは、「奥行き・形状」に注目し、仮想物体の知覚・認知プロセスを機械学習によりモデル化するための研究をスタートした。対象として静止物体を想定し、現実物体と同じ形状・テクスチャの仮想物体を現実環境に重畳表示した際に、被験者が実際に感じる仮想物体の大きさ・位置を被験者実験により測定するための実験システムを構築した。 研究分担者の山本のグループでは、前年度に引き続き、認知適性合成駆動型拡張現実感の基本モデル設計に向けて従来研究調査に加え、プロジェクタおよび光学シースルー型 HMD を用いて錯視モデルの試行を行ってきた。HMD上での色恒常性を利用した色域限界突破の可能性を探るため、従来より取り組んでいるプロジェクタとの共通点などを基軸にさまざまな試行によってその効果について確認を行った。 研究分担者の天野のグループでは、「現実環境の状況に依存した仮想物体の知覚・認知プロセスのモデル化」における光学的整合性の課題を解決する方法として、複数のプロジェクタを用いた視点依存光沢感提示手法を検討した。また、同課題の方法として考案した。クレイク・オブライエン効果を応用した投影対象の存在感を低減させる光学イリュージョンについて国内会議にて研究成果を報告した。 研究分担者の蒲池のグループでは、VR空間内での知覚における多感覚知覚(視覚と触覚)をベースにした実験を試みた。さらに、論文化は次年度以後になるが、人の自己身体や運動学習に関わる認知特性の解明に仮想空間での環境が適していることの利便性をふまえた新たな実験データ取得に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響で被験者実験の実施上の困難さや実験装置構築のための部材納品の遅延などの影響もあり、遅れ気味な点もあるが、全体としては、順調に進んでいると考えられる。 加藤のグループでは、前年度構築した実験システムを改良し被験者実験をやり直す必要があったが、システム改良が順調に進み、予定通りの実験を実施することができた。 斎藤のグループでは、作成した実験システムを利用して、仮想物体の大きさ知覚データを収集する実験を行った。しかし、想定していような、仮想物体と現実物体の間の大きさ知覚の違いが顕著には表れなかったので、仮想物体の提示方法について検討を行った。 山本のグループでは、HMDを対象として色における錯視モデルの認知的効果を数式化し、試作機にてその動作を確認した。ただしある効果はみられるものの、他の箇所に違和感を生じさせることにつながるため、問題解決についてさらに検討を重ねる活動を継続して行っている。 天野のグループでは、コロナ禍の影響によって半導体不足などの様々な障害が発生し、研究装置の構築などに遅延が生じた。また、提案手法の評価などのようなオンラインで実施できない項目について問題が生じ、十分な研究成果が得られなかった。 蒲池のグループでは、コロナ禍により国際会議での口頭発表などは断念せざるを得なかったが、次年度の学術論文への成果発表などにつながる重要な知覚実験データの取得、またそのための身体モデルの構築など、技術的に大きな進歩がえられた。
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Strategy for Future Research Activity |
加藤グループでは、被験者実験により得られた知見をもとに、知覚・認知プロセスのモデル化と逆変換技術の改良、及び、認知的整合性駆動型仮想物体表示パイプラインの検討を進めていく。 斎藤のグループでは、仮想物体の大きさ知覚が顕著に表れる方式・提示方法を検討し、引き続き仮説を立て、それに基づく実験を行いながら進めていく。 山本のグループでは、色における錯視モデルに関して改めて状況を整理してまとめることで、次の一手の設計を進めていく。その一つとして、これまでは視野の一部という局所的な錯視を対象としていたが、周辺視野にも及ぶ広域な範囲での色が人に与える認知性について調査し、その表現を試みる。 天野のグループでは、2021年度に実施できなかった項目について実施して、研究の遅れを取り戻す。また、2022年度には、光学的整合性に関する課題として、空間型拡張現実感によるドライバーの視界改善や光線場投影による異方性反射の操作、知覚的BRDF操作や任意の照明環境再現について研究を行う。 蒲池のグループでは、得られたデータをもとに、確実に学術論文化を進める。今年度得られた知見を補強するための実験データ取得を引き続き行う。また、異分野の他のグループとのディスカッションをすすめ、互いの知見を有効に利用することができることを意識しながら課題に寄与していく。
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