2020 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular pathogenesis of human disorders associated with deficiencies in the DNA repair and environmental stress response systems
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20H00629
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荻 朋男 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80508317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光武 範吏 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50404215)
真下 知士 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80397554)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境ストレス・環境変異原 / DNA修復・転写共役修復 / ゲノムインスタビリティ / DNA修復欠損性疾患 / がん・老化関連疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境ストレスの多くは、生物の遺伝情報が格納されるゲノムDNAに損傷を誘発する。DNA損傷は適切な遺伝子の発現を妨げることで、細胞機能の維持に障害をきたすと同時に、DNA合成を阻害し遺伝情報の劣化をもたらす。このため、環境ストレスへの過度な曝露は、老化や発がんを含む様々な疾患の発症と密接に関係する。本研究では、生体内外の環境に由来する様々なストレスに起因するDNA損傷に対する、DNA修復機構や環境ストレス応答機構の分子メカニズムの作動原理と、これらが障害されることで生じる生体影響について、トランスオミクス解析 (ゲノム/遺伝子発現/モデル動物/ヒト疾患症例)を用いた横断的な研究により理解を深め、関連するヒト疾患の病態解明を目指している。 環境ストレス応答機構の異常が疑われ、共通の臨床症状を示す疾患原因不明の日本人症例10例のオミクス解析の結果、2遺伝子 (ADH5とALDH2)同時機能欠損により発症する新規遺伝性疾患を特定した。本疾患はアルデヒド代謝異常により誘発されることが示されたほか、対象症例で同定された病的変異に相当する遺伝子変異を導入した疾患モデルマウスでは、患者で認められた種々の臨床症状に類似した表現型が観察されること、さらにALDH2の変異アレルの数により表現型の重篤度が規定されることが明らかになった。 この他にも、種々のモデルマウスの作製を進めており、予想外の表現型が観察されるなど、興味深い結果が得られつつある。引き続き、DNA修復機構・環境ストレス応答機構の異常により発症する疾患の病態解明を目指し研究を推進してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA修復機構・環境ストレス応答機構の異常が疑われるものの疾患原因が不明である症例の収集と、オミクス解析による疾患原因の同定、疾患発症メカニズムの解明、病態調査に取り組み、アルデヒド代謝に関連する遺伝子ADH5とALDH2の同時異常により発症する遺伝性疾患を特定し、新規疾患概念としてAMeD症候群 (A: 造血不全、Me: 知的障害、D: 低身長・小頭症)を提唱した。さらに、モデルマウスの解析とヒト症例の検討から、ALDH2の変異アレルの数が症状の重篤度を規定していることも明らかにするなど、臨床診断や治療法の検討に資する知見の獲得にもつながっており、成果の社会還元の観点からも、本研究は順調に進行していると考えられる。また、新規疾患に関連するモデルマウスの作製に成功しており、本遺伝子改変マウスの病態解析を進めているほか、多種類のモデルマウスの作製と分子病態の検討を同時に実施しており、興味深い結果を得つつあることから、今後も順調に進展してゆくと期待される。さらに、DNA修復機構・環境ストレス応答機構に関するゲノム・分子生物学的解析についても着実に検討を重ねており、モデルマウスの成果と合わせて評価することで、これらの機構の異常により発症する疾患の分子病態の解明につながってゆくと期待される。以上より、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA修復機構・環境ストレス応答の検討のために作製した種々のモデルマウスについて、評価・検証を継続するほか、現在解析中の新規疾患関連のモデルマウスについても引き続き検討を進める。表現型解析だけでなく各種オミクス解析 (ゲノム・遺伝子発現解析やモデル細胞解析、ヒト症例との病態比較検討など)を活用することで、分子病態の解明に取り組む。これらにより、遺伝性ヒト疾患の病態理解につなげる。また、引き続き、DNA修復機構・環境ストレス応答システムの異常が疑われる疾患原因不明の症例収集を行い、ゲノム解析をはじめとしたトランスオミクス解析を用いた実験的アプローチにより、疾患原因の特定と原因変異の病原性の検証を進める。疾患原因が確定した症例については、環境ストレスと生体影響との関係性についての調査へ移行する。機能未知の疾患原因となる遺伝子変異が同定された場合には、分子・細胞生物学的解析のほか、当該モデルマウスを作製し病態解析を実施する。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Biallelic VPS35L pathogenic variants cause 3C/Ritscher-Schinzel-like syndrome through dysfunction of retriever complex2020
Author(s)
Kato K, Oka Y, Muramatsu H, Vasilev FF, Otomo T, Oishi H, Kawano Y, Kidokoro H, Nakazawa Y, Ogi T, Takahashi Y, Saitoh S.
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Journal Title
Journal of Medical Genetics
Volume: 57
Pages: 245~253
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Topoisomerase I-driven repair of UV-induced damage in NER-deficient cells2020
Author(s)
Saha LK, Wakasugi M, Akter S, Prasad R, Wilson SH, Shimizu N, Sasanuma H, Huang SN, Agama K, Pommier Y, Matsunaga T, Hirota K, Iwai S, Nakazawa Y, Ogi T, Takeda S.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of USA
Volume: 117
Pages: 14412~14420
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 転写と共役したDNA修復機構にはRNAPIIのユビキチン化修飾が必須である.2020
Author(s)
中沢由華, 原雄一郎, 岡泰由, 小峯起, Diana van den Heuvel, 郭朝万, 大学保一, 磯野真由, 何予希, 嶋田繭子, 加藤香奈, 賈楠, 橋下悟, 田中都, 祖父江顕, 光武範吏, 菅波孝祥, 増田章男, 大野欽司, 中田慎一郎, 真下知士, 山中宏二, Martijn S. Luijsterburg, 荻朋男.
Organizer
第10回 名古屋大学医学系研究科・生理学研究所合同シンポジウム
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