2021 Fiscal Year Annual Research Report
短時間高活性水熱前処理を用いた利益創出・エコ型バイオマス全成分有効利用法の開発
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20H00644
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中村 嘉利 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (20172455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 真希 (高野) 富山大学, 学術研究部工学系, 助教 (10444192)
浅田 元子 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (10580954)
石田 竜弘 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50325271)
中崎 清彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (70180263)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオリファイナリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国内で大量に発生する未利用バイオマス(廃材、間伐材や廃竹等)を原料として、短時間高活性水熱前処理(加圧式マイクロ波水熱処理または高圧高温水蒸気処理)を用いた高付加価値バイオマス由来化成品(電子基板材料用エポキシ硬化樹脂、薬剤用DDS担体セルロースナノファイバーや高強度ポリ乳酸コンポジットなど)の創製と機能性評価を行う。本年度は短時間高活性水熱前処理によって間伐材(スギ)と廃竹(孟宗竹)を処理し、得られた水抽出画分、セルロース画分およびリグニン画分(低分子量リグニン)の特性および有用製品への変換を試みた。水抽出画分中には水溶性ポリフェノールが含まれ、DPPHラジカル消去能等の測定により、抗酸化活性を有することを明らかにした。セルロース画分のグラインダー処理を行い、薬剤用DDS担体の作製および機能性評価を行った。高活性水熱前処理セルロースはある程度解繊されていたので、市販セルロース(クラフトパルプ)として省エネルギー(グラインダ―回数が少ない)でナノファイバー化が可能であった。次に、得られたセルロースナノファーバー(CNF)に卵巣がんや乳がん等に使用されているパクリタキセル(PTX)をモデル薬剤として用いて薬剤用DDSを作製した。MKN45(ヒト胃がん細胞)を腹膜播種したマウスを用いて治療効果を検討した結果、PTX/CNFを腹腔内投与した場合のマウス生存日数が未投与の約2倍になることを明らかにした。リグニン画分については抽出溶媒によって低分子量リグニンの抽出量や分子量が大きく異なるので、種々の有機溶媒(メタノール、エタノールやアセトン等)を用いて抽出された低分子リグニンの特性比較を行った。また、低分子量リグニンを硬化剤としてだけでなく、エポキシ樹脂原料として使用してバイオマス度80%以上のエポキシ樹脂硬化物を作製することに成功にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短時間高活性水熱前処理によってバイオマスから得られた水抽出画分の抗酸化活性の評価、セルロース画分から得られたCNFの薬剤用DDS担体としての利用と治療効果およびリグニン画分(低分子量リグニン)の特性および高バイオマス度エポキシ樹脂硬化物の作製を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
短時間高活性水熱前処理によってバイオマスから得られた水抽出画分中の抗酸化活性を示す物質の分離精製と同定、薬剤用DDS担体として最適なCNFの製造と治療効果の検討、リグニン画分(低分子量リグニン)を原料とした高バイオマス度エポキシ樹脂硬化物の熱機械特性の評価、ポリ乳酸とCNFの混練による高強度ポリ乳酸コンポジットの作製と物性評価を行う。最後に本研究システムが利益創出かつエコ型システムであることを立証する。
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