2020 Fiscal Year Annual Research Report
Physical Biomarkers Based on Dynamics of Cancer Cells and Organoids
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20H00661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 求 京都大学, 高等研究院, 特任教授 (00706814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
妹尾 浩 京都大学, 医学研究科, 教授 (90335266)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオマーカー / 消化器がん / 臨床ヒト試料 / 時空間ダイナミクス / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究分担者・妹尾(京都大学医学研究科・消化器内科学・教授)の全面協力のもと、遺伝子レベルの変異ががん細胞やその集団の動態に与える影響をマルチスケールで定量解析し、これを基盤としたがん診断の新たなバイオマーカーの創出を目指す。具体的には、遺伝子変異が特定されたヒト大腸がん細胞などを用いて(1) 単一細胞レベルの変形と運動(2) 細胞集団レベルの大規模変形と形態形成といった異なる階層構造のダイナミクスの精密計測と数理解析を行う。 単一細胞レベルの動態に関する研究では、まず遺伝子変異が明確に特定されたマウス膵管がん細胞を用いて、通常の病理観察では識別できないドライバー遺伝子(KRASとBRG1)の変異を、自発変形解析などの細胞動態から見分けられないかについての検討を様々な基質モデルを用いて行った。また、組織レベルの動態に関する研究としては、マウス大腸がんのオルガノイドを用いて単一細胞から空孔を持った腸管オルガノイドの形成までをライブ観測できる実験系を確立し、転移能を持ったオルガノイドとそうでないオルガノイドにおいて変形によるエネルギー散逸が明確に異なることを見出した。 また、ヒト造血幹細胞の加齢による糖代謝の増加が、がんにおけるWarburg効果と共通している部分があることに着目し、本研究で用いる画像解析手法をPSA染色画像解析に活用した。この結果をハイデルベルク大学・血液内科学Ho教授や欧州分子細胞学研究所のバイオインフォマティクスユニットの行ったメタボロームやsingle cell RNAseqと組み合わせた成果を論文として発表するなど当初予期していなかったような成果も上がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、細胞レベル・組織レベルの双方について、実験系が確立できただけでなく、遺伝子変異が定義されたマウスモデルを用いた実験で、通常の表現型では識別できない遺伝型の影響を動態から定量的に識別できることを示すことができた。例えば令和2年度の主たる成果としては、病理画像上やプラスチックの培養皿上では見分けがつかないが全く転移能が異なる2つの膵管がん細胞株を、ラミニンで精密に機能化した基質モデル上で行う自発変形のパワースペクトル解析や遊走軌跡の違いで数値的に明確に識別できることを見出した。 また、本研究に関連したテーマである、細胞の自発変形や遊走運動に物理学的視点からフォーカスした総説を、ミュンヘン工科大学・Sackmann名誉教授との国際共著で発表した。さらに、概要でも述べたように、本研究で用いる画像解析の手法を活用して、がん化と共通する代謝機能の変調を、国際共同研究へと活用した論文として発表するなど、当初の予定を上回るペースで研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる令和3年度からは、マウス由来の大腸がん・膵がん細胞を用いて最適化した実験・解析系を、いよいよ臨床検体由来のヒト大腸がん細胞を用いての実験へと移行する。 そのために最近、研究分担者・妹尾(京都大学医学研究科・消化器内科学・教授)のアドバイスのもと、ヒト大腸がんの研究に向けた予備検討実験を開始したところ、マウス大腸がんオルガノイドに比べてオルガノイドから単一細胞を取り出すことが困難であることが分かった。この問題を解決するために、プロテアーゼ処理など条件を系統的に変えてプロトコルを最適化する。 単一細胞レベルの研究では昨年度に引き続き、二値化して抽出した細胞接着面のフーリエモード解析や遊走軌跡の解析を行うとともに、自律粒子モデルを用いた理論計算を新たに導入する予定である。これによって遺伝子変異が数式のどのパラメタに対応し、これを変調するかを指標化することを目指す。 またオルガノイドレベルでは、単離細胞からオルガノイドへの成長をライブ観測する実験系が確立できたので、これを動態の解析パイプラインへと効率よくつなげることを行う。研究分担者の妹尾らはこれまで主にオルガノイドライブラリの樹立に注力してきたため、今年度から遺伝子レベルの情報の網羅的解析や健常細胞の遺伝子編集に着手し、物理・数理的なアプローチと医学・分子生物的なアプローチの融合を推進する。
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Remarks |
アウトリーチ活動:高校生のためのサイエンスセミナー オンライン開催 “物理科学で生命の謎を解明する”,(参加者:16名),於:オンライン,主催:洛星中学・高等学校,日時:2020年10月31日
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Glycogen accumulation, central carbon metabolism, and aging of hematopoietic stem and progenitor cells.2020
Author(s)
Poisa-Beiro, L.; Thoma, J.; Landry, J.; Sauer, S.; Yamamoto, A.; Eckstein, V.; Romanov, N.; Raffel, S.; Hoffmann, G. F.; Bork, P.; Benes, V.; Gavin, A.-C.; Tanaka, M. & Ho, A. D.
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 10
Pages: 11597
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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