2020 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期における真言宗寺院の祈雨儀礼に関する調査研究
Project/Area Number |
20H00675
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
有賀 夏紀 早稲田大学, 招聘研究員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 祈雨儀礼 / 称名寺聖教 / ダキニ天 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、真言宗寺院に所蔵される中世後期(14~16世紀)の祈雨関係資料を調査・分析し、中世寺院における儀礼空間の復元的研究と、儀礼を支える思想基盤および寺院間の知的ネットワークを解明することを目的とした。 研究方法として、「請雨経法」「水天供」といった密教修法に関する次第類の収集・分析、祈雨儀礼と密接に関わる講式類の精査、儀礼の背景となる言説群の考察等を計画した。当初は各地の寺院で資料調査を行ない、関連資料を収集・分類する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の全国的な流行により、寺院調査を実施することが困難となった。そのため、すでに収集した次第類の分析・分類、儀礼の根拠となる仏教教理の解明といった資料読解を主軸として研究を進めた。 具体的には、真言宗の祈雨法に関する事相書類、および神奈川県立金沢文庫が保管する称名寺聖教中の祈雨法をめぐる次第類の分類に着手した。次第類には修法の手順や用具、所依の経疏などが記載されており、儀礼の作法や思想的背景を知ることができた。また、称名寺聖教に含まれるダキニ法の口伝集『辰菩薩口伝』等の内容分析を行い、『辰菩薩口伝』が中世の仮託書や疑偽経典と通底していることなどを明らかにした。これは、14世紀の真言宗寺院における学問の様相を示すものであり、儀礼関連テキストの叙述と思想基盤の検討を通して、真言宗寺院の儀礼をとりまく宗教世界の一端を明かすことができた。
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Research Products
(1 results)