2020 Fiscal Year Annual Research Report
子ども哲学で培った自己調整学習力が教科学習に波及するカリキュラム開発
Project/Area Number |
20H00796
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岡田 泰孝 お茶の水女子大学, 附属小学校, お茶の水女子大学附属小学校
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 子ども哲学 / 自己調整力 / 論争問題学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は子ども哲学と社会科の論争問題学習が同時に行われるカリキュラムによって,子ども哲学で培った自己調整学習力が,社会科で論争問題学習を行う子ども達にいかなる自己調整力をどのように伸ばすことが出来るのかを明らかにすることである。 論争学習を行う子ども達が「判断の規準」を用いることを子ども哲学にも援用したところ子ども哲学の授業においても自分たちでつくった「ふり返りの規準」に基づいて自己評価できることを明らかにした。具体的には小学6年生が「死ぬこととは?」という問で学んだことに対して自分達で作成した「ふり返りの規準」に基づいて自己評価を行った「記述」を教員が分析したのである。さらに子ども哲学において行われた実践で[自分を不自由にするものは何か]の授業における発言記録と子どもの自己評価の記述を関連させて分析を行った。以上の対話と記述の仕方の関係から〈対話への自分の参加のあり方〉や〈学習した価値・事柄への思考の変化や探究〉という自己調整力が育っていったことが明らかになった。次に以上のような子ども哲学で培った自己調整能力が,社会科論争学習にいかなる波及を及ぼし得るのか,子どもの対話や記述から考察した。学習の場面設定は「川内原発再稼働をめぐる論争点には,原発立地自治体の意向を反映するか否か,原発立地範囲はどの程度までを含めるのか」とした。これらから明らかになったことは,川内原発再稼働という政治問題で子ども達が判断する際に子ども達の「判断の規準」は「公共的価値」に重きが置かれていたことを示している。 子ども哲学において対話的に探究し「ふり返りの規準」に基づいて自己評価活動を行うことで,子ども達には〈対話への自分の参加のあり方〉や〈学習した価値・事柄への思考の変化や探究〉などの自己調整力が育まれ,社会的な論争問題に対しても自分達の対話を見つめる教育的鑑識眼が機能する可能性が示唆された。
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