2020 Fiscal Year Annual Research Report
同じ遺伝子なのに なぜ見た目が違うのか 双子とミジンコから学ぶ表現型可塑性
Project/Area Number |
20H00897
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
小林 るみ 津山工業高等専門学校, 技術部, 技術補佐員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 表現型可塑性 / オオミジンコ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、DNA配列の変化を伴わないエピジェネティクスという概念・分野が遺伝子発現調節機構を理解する上で主流となっている.そこで学生らがエピジェネティックな遺伝子発現の調節をイメージできる実習が必要であると考えた.同じゲノムを持つクローンであっても, 外的要因(エサの量・個体の密度・温度・日照時間など)により表現型に違いが生じる表現型可塑性の実習および必要な器具を開発し, 遺伝子発現の調節およびエピジェネティックな発現制御への理解を促すことを試みた. オオミジンコの表現型可塑性は飼育条件(エサの量,飼育温度,個体密度,日照時間)を変えることで体長や産卵数の違いから2週間という短期間で得ることができる.筆者はさまざまな条件の違いによる飼育を2ヶ月間行い,学生実習に適した条件を探した. エサの量および飼育密度を違える実験において,条件の違う管瓶内で一定期間飼育し得られた仔虫の合計がどれもほぼ同数であり,エサの量・密度に応じて1個体の産卵数が変化していた.これは飼育条件がオオミジンコに対し外的要因となり産卵数における表現型可塑性が現れたと考えられる.またオオミジンコの体長でも肉眼でわかる表現型可塑性が顕著に現れ,エサの量・密度による飼育条件は実習に使用できると判断した. 学生実習においても,飼育条件に応じて1個体の産卵数の変化および体長の変化が同様に現れた.またエサの量が少なく密度の高い実験群の中で,育房に休眠卵ができるという表現型可塑性が現れた班もあった. 学生から提出されたレポートの考察より「同じ遺伝子から違う表現型が現れる」「表現型可塑性は、遺伝子そのものは変化せず環境に合った変化が起きる」といった表現型可塑性をエピジェネティックに考える考察が多く見られ,今回の実習開発の目的である表現型可塑性の理解,遺伝子のエピジェネティックな発現制御への理解を促せたと感じられた.
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