Outline of Annual Research Achievements |
2014年に創設された立地適正化計画(以下,立適)制度により,都市機能の立地を促進する都市機能誘導区域と,居住を促進する居住誘導区域(以下,居誘区域)が各地の自治体で指定されているが,居誘区域の浸水事例が発生する等,防災施策との連携の必要性が指摘されている.本研究は将来人口動態を踏まえ,居誘区域指定時の浸水想定区域の取り扱い基準を明確にし,浸水被害リスク(以下,リスク)低減を目指した居誘区域の指定手法について提言することを目的とした. 対象都市とした142都市について,まず居誘区域の指定範囲の一つの基準である市街化区域から浸水想定区域を除外した範囲を居誘区域とする場合の,除外可能な浸水深の閾値や人口密度への影響について,将来人口動態を踏まえて検証した.続いて,より危険性が高いとされる家屋倒壊等氾濫想定区域を除外した範囲を居誘区域とする場合について同様の検証を行い,最後に検証結果と浸水想定区域の取り扱いの実態について分析した. その結果,浸水想定区域全域や,危険性の高い浸水深2.0m以上の区域を除外して居誘区域を指定可能な都市が多いことが明らかとなったが,実際には浸水想定区域を除外していない実態も明らかとなった.また家屋倒壊等氾濫想定区域についても,対象都市の全てで除外して居誘区域を指定可能であることが明らかとなった.以上のことから,今後各自治体で居誘区域の指定や再検討をする際には,将来人口動態及びリスクの検証・評価を十分に実施した上で指定することより,リスクの小さいコンパクトな都市が形成可能である.またリスクに応じて,浸水想定区域を除外して居誘区域を指定することや,除外できない浸水想定区域の対策について検討し,国はそのことをリスクと併せて立適計画書に明記するよう指針で示すことにより,立適と防災施策の連携体制が明確になり,対策の実効性も担保されるものと考えられる.
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