2020 Fiscal Year Annual Research Report
金属陽極酸化における電極切替えがメインの簡易的且つ革新的な前処理手法の検討
Project/Area Number |
20H00950
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
菊川 祥吉 宇部工業高等専門学校, 技術室, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 陽極酸化処理 / チタン / 陰極電解処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 チタン(Ti)の陽極酸化処理において、元々の金属表面には強固な自然酸化膜が存在し成膜の阻害要因となる。自然酸化膜を除去する前処理は、本処理での良質な皮膜形成の為に重要な工程だが、従来の前処理(化学研磨処理)では多工程となり多くの時間と経費を要する。前述の課題に対し本研究では、陽極酸化の対極である陰極側の還元反応を利用した陰極電解を前処理とする。本研究手法では、陽極酸化処理と同一の電解液を使用し、極性切替えて一連の処理を行う為、従来の前処理よりも工程が簡略化され、更に各条件の調整次第で膜厚、膜質が制御可能と考えている。本実施期間では、本研究手法で作製した試料と従来の前処理手法で作製した試料との比較評価等から本研究手法の実用性と有効性を調査・検討した。 研究方法 試料はTi板を脱脂、超音波洗浄して使用した。電解液は硫酸を使用した。陽極酸化条件は昇圧法にて作製した。陰極電解条件は電解電流密度を数条件設定し通電時間は10 分に固定した。その他に陰極電解(前処理)を施さず陽極酸化した試料と、化学研磨前処理後に陽極酸化した試料を作製し比較対象とした。評価は、色調評価(分光測色計)、膜厚評価(グロー放電発光分析装置:GDS)、膜質評価(X線回折装置:XRD)を行った。 研究成果 色調評価では外観観察と分光測色計測定結果から、本研究手法による前処理の試料がその他の前処理2条件で作製した試料と比べて膜厚が厚くなっていることが示唆され、それと対応してGDSによる膜厚評価でも同様に本研究手法による前処理の試料の方が膜厚増加した結果が得られた。本研究手法以外での前処理による試料で膜厚抑制された要因として自然酸化膜の影響が考えられ、本研究手法が有効であったことが示唆された。またGDS、XRDの結果から、陰極電解処理の電解電流密度によって膜厚、膜質に違いが生じ、それらの制御に期待できる結果が得られた。
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